(参考写真)鴨緑江で洗濯する女性。現在はコロナ流入阻止の名目で川への接近は厳禁。2017年7月中国側から撮影アジアプレス

 

北朝鮮では、金正恩政権による過剰な新型コロナウイルス対策で経済が混乱、民生が悪化して一部で餓死者まで発生しているが、当局が各地で緊急の無償食糧配布を行ったことが分かった。アジアプレスでは7月12~14日に咸鏡北道(ハムギョンプクド)の3都市と両江道(リャンガンド)で、国内の取材協力者に依頼して調査を行った。(カン・ジウォン/石丸次郎

各地域の調査結果はほぼ同様で、7月第2週の末から13日にかけてトウモロコシ5キロ程度が無償で配布された。金正恩氏は6月中旬に行われた労働党中央委員会総会で食糧危機を認め、「人民に安定した生活を保障」するとして特別命令書を出していたが、今回の食糧配布はそれに基づく措置と見られる。6月末にもトウモロコシが小量支給されていた。

各地の調査報告を見てみよう。

◆1人1日750グラムを無償で配布

咸鏡北道の茂山(ムサン)郡では、北朝鮮最大の鉄鉱山である茂山鉱山をはじめ、職場を通じて住民にトウモロコシで7日分が支給された。

両江道の恵山(ヘサン)市でも、職場を介した方式でトウモロコシの配布があった。ただ、「企業所によって若干の違いがあり、靴工場では5日分、銅鉱山では7日分が支給された」と協力者は伝えてきた。咸鏡北道の清津(チョンジン)市、会寧(フェリョン)市でも同様であった。

いずれの都市でも、1日分は労働者1人当たり750グラムで、扶養家族にも1人当たり450グラムが出たという。また制度上の国家配給ではなく、無償の臨時配布だった模様だ。

北朝鮮では一般住民対象の廉価な国家食糧配給制度は平壌を除いて崩壊している。企業では、独自の裁量で給与に代わる現物支給形式で食糧を出す場合もあるが、企業間で格差が大きかった。

北朝鮮地図(制作アジアプレス)

◆住民たちの反応は? 食糧の出所は?

わずか5~7日分とはいえ、住民たちは臨時配布を歓迎している。6月に入り市場の食糧価格が2倍前後も急騰して混乱したが、今回の臨時配布によって価格が少し下落したと、各地の協力者は伝えてきている。なお、最近になってロシア産の小麦粉が市場で売られるようになったという。

それでは、緊急配布された食糧の出所はどこなのだろうか? 軍用の食糧を回すという情報もあったがはっきりしない。受け取った協力者たちは次のように伝えてきている。

「中国から支援が入るからしばらく我慢せよと、6月に当局の指示があったが、今回受け取ったトウモロコシは国内産だった。噂があった2号倉庫(戦時用備蓄米)の白米ではなかった。『計画米』を転用したのではないか」(咸鏡北道)
※「計画米」は、公務員や建設動員などの配給用に国家が計画的に備蓄した食糧のこと。

「当局は『軍糧米』から住民に支給すると6月末に住民に説明していたが、機関や企業所で車両を準備して軍に受け取りに行くという動きはまったくなかった。今回の支給は『軍糧米』ではないと思う」(恵山市)