アスベストを吸ってしまったことで発症する肺や心臓などの膜にできる特殊ながん「中皮腫」による2020年の死亡者数が1600人を超えて過去最多となったことを9月10日、厚生労働省が発表した。(井部正之)

中皮腫死亡者数の推移。統計がとられるようになった1995年以降ほぼ増加し続けている

◆東京都が初めてワーストに

これまで中皮腫による死亡者数は2017年の1555人がもっとも多かったが、2020年は50人増の1605人となり3年ぶりに最多を更新した。内訳は男性1337人、女性268人。

都道府県別では多い順に東京都156人、大阪府143人、神奈川県107人、兵庫県103人、北海道101人。東京都は初めて最多となった。また北海道は初めて100人を超えた。

政令指定都市別でみると、東京都区部が113人でもっとも多く、大阪市47人、横浜市44人、札幌市42人、名古屋市32人と続く。

クボタの旧工場被害が多数出ている尼崎市は政令市ではないため単独では計上されておらず、兵庫県の被害者数に含まれている。

人口動態統計で中皮腫死亡者数のデータがとられるようになった1995年以降の累計は2万8213人に達した。1~2年後には3万人を超えるとみられる。

過去のアスベスト使用量と中皮腫死亡者数には相関がみられることがよく知られている。アスベストの使用量が増加すると、数十年後にその量に応じて被害が増える。

日本とイギリスのアスベスト使用量と中皮腫死亡者数を比較すると図のようになる。

イギリスのアスベスト輸入量は最盛期が1960~1974年までの15年間で、1962年を除いて15万トン以上に上る。使用禁止は1999年。

日本より15~20年早く被害が顕著になり、中皮腫死亡者数は2016年に最多の2595人まで増加。累計死亡者数は6万7117人に上る。

日本の場合、輸入ピークは1974年の約35万2000トン。15万トン以上輸入された最盛期は、1967~1997年までの30年間におよぶ。そのうち20万トン以上だったのは1968~1994年までで、じつに26年間である。