菅義偉前総理大臣 官邸HPより

 

菅義偉前首相の政治資金を調査した結果、日本会議や生長の家などに「会費」「講習会受講」などの名目で支払っていたことが明らかになった。相次ぐ「政治とカネ」の不祥事により透明性の確保がでは求められているが、少額の領収書は記載する義務がないため政治資金の流れが見えにくくなっている。「法改正すべき」と専門家は指摘し、総務省は「議員が議論すべき問題」と回答したが、国会議員たちから法改正を求める声は大きくなっていない。
フロントラインプレス・鈴木祐太

国会議員が政治に使ったお金は政治資金収支報告書(以下、収支報告書)で、有権者がチェックできるようになっており、総務省や都道府県(一部の選管を除く)の選挙管理委員会のサイトで閲覧ができるようになっている。

しかし、政治家が使ったお金の全てが記載されているわけではない。5万円以下の支出はその明細を記載する必要はなく、領収書の写しを提出しなくてもいいことになっている。国会議員関係団体に指定されている場合は、1万円以下の支出がそのようなっているが、もし、支出の明細が記載されていない1万円以下の使途を知りたければ、その領収書の写しを開示請求すれば確認することができる。

神戸学院大学大学院の上脇博之教授は、菅前首相が代表を務める「自由民主党神奈川県第二選挙区支部」(以下、政党支部)の2019年分「渉外費」の一万円以下の少額領収書の写しを開示請求し、政治資金センターのサイトで公開した。

政党支部の少額領収書を分析したところ、その多くが「会費」または「懇親会参加費」などとして支出さていることが分かった。

いわゆる飲食を伴う会合に参加し、その飲食代の対価として支払う「懇親会参加費」は、提供物に対する対価として正当と言えるだろう。「懇親会参加費」だけでなく、「反省会参加費」「打ち上げ参加費」「昼食会会費」「新年会費」「忘年会費」などはこの類だ。

一方、菅氏が代表の政党支部は、2019年7月28日に、生長の家相愛会に対して「講習会受講2枚分」(原文ママ)と領収書に記載された対価を支払っている。この講習代を含めて、2件7000円分支出している。これらも、研修を受けているなら、その対価として正当な支払いと言えるだろう。

一方、「会費」としか書かれていない領収書が261件、12万45850円分もあった。この中身は前述のような「飲食代」なのか、「研修会」としての会費なのか、それとも「年会費」の類なのか、区別することはできない。

政党支部の支出の中には、歌謡教室に「会費」として払っている事例もあった。歌謡教室に「会費」を払うということは、歌が上手くなるために「指導料」として払っていると受け止めるのが一般的だろう。はたしてこれは「政治活動」として正当なのだろうか。菅氏が歌謡教室に通っていたのだろうか?

これらの支払いについて、情報公開請求した上脇教授は次のように話している。

「菅氏以外の誰かが趣味で歌謡教室に通っている会費ではないか。となると、その会費の支払いをする義務があるのは、その歌謡教室に通っている人物であり、政党支部はその肩代わりをして、その人物に寄付したことになるのではないかとの疑念が生じます」

総務省の政治資金課に問い合わせてみた。

「政治資金規正法に『会費』に対する定義があるのですが、それ以外に定義した規定はありません。総務省の立場としては、収支報告書であれ他の書類であれ、記載すべき事項が書いてあるかなどの形式的な審査しかできません」

との回答を受けた。政治資金規正法には「『党費又は会費』とは、いかなる名称をもってするかを問わず」と書いてあるだけだ。
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