(参考写真)乳飲み子を連れて路上で商売する女性。2007年7月沙里院市にて アジアプレス撮影

◆寒くなって死亡者増 当局も緊張

北朝鮮で冷え込みが厳しくなってきた10月以降、乳幼児が病気で死亡する例が増えていることがわかった。昨年来、中国からの医薬品の輸入が滞ったままで、病院や保健機関でもほとんど枯渇して治療できない状態だ。「事態は深刻だ」と北部地域に住む複数の取材協力者が10月末に伝えてきた。当局は注意を喚起しているが、薬不足でお手上げ状態だという。(カン・ジウォン/石丸次郎

「私の近隣で10月末の一週間に3人も子供が死にました。調べたところ男児2人と女児1人で年齢は3歳と2歳と1歳。死因は百日咳、インフルエンザ、結核でした。薬も予防接種もなく、風邪や下痢で年寄りと子供があっけなく死んでいます」

両江道(リャンガンド)の取材協力者は自身の周辺の状況をこう伝えてきた。

◆病院に生理食塩水もない

金正恩政権は新型コロナウイルスの流入遮断を理由に2020年2月から貿易を厳しく制限、中国から医薬品が入って来なくなった。春には品薄になり、闇の販売価格が暴騰。夏になると地方都市の病院からほとんどの医薬品が姿を消し、高齢者の死亡が相次ぐ事態となっていた。

平壌にあるロシア大使館は、今年に入り多くの館員を出国させたが、その理由をフェイスブックに「薬品を含めた必需品の深刻な不足」だと記している。

「現在、病院、薬局にも医薬品はない。生理食塩水すらない。闇で販売している薬はべらぼうに高い。病院での診察は無料だが、医師は『薬を飲め、鍼をうて、民間療法をしてみよ』というだけ。国産の薬が売られることがあるが、質が悪く効き目も悪い上、ニセ薬も多くて信用できない。子供が病気になっても、親には手のほどこしようがない有り様だ」

別の協力者は、両江道の病院の現状をこう説明した。経済不振でほとんどの人が現金収入を激減させており、栄養状態が悪化して免疫力が落ち、風邪、インフルエンザや腸チフス、結核に罹る人が増えているという。

乳幼児の死亡が増えて当局も緊張している。

「人民班や学校に、保健所や病院から人を送って衛生講習をしている。内容は、風邪の予防法とか、水は沸かして飲めと言う程度なので、大して役に立たない。子を持つ親たちの心配は収まらない」