◆懇話会に権限なしの堺市

また規則で対策委員会の下に部会を設置可能としており、「石綿関連疾患リスク推定部会」(学識経験者5人、医師1人)と「石綿関連疾患健康・心理相談部会」(医師3人、臨床心理士1人)の2つを設置。2021年4月からリスク推定部会を開始し、毎月1回のペースで健康リスクの検討を重ねている。そこには模擬実験や施工業者らへの徹底した聞き取り調査も含まれる。並行して同6月から生徒らの健康・心理相談も始めている。

つまり、加古川市は市長直轄の審議会として法的権限を持つ対策委員会に健康リスク評価だけでなく行政対応なども含め、徹底検証をさせている。審議・決定された事項についてどう対応するかはもちろん行政に委ねられているが、審議会の1つである以上、その結論は重い。委員構成の透明性も高い。それだけ市が生徒らのアスベスト曝露という問題を重く考えているということだ。

これに対し堺市は法的拘束力のない要綱で「懇話会」を位置づけ。児童らのアスベスト曝露や健康リスクを検証するために「有識者等から広く意見を聴取する」目的で、「教育長」が設置したにすぎない。

委員構成も学識経験者とアスベストに関する専門的知見を有する者など5人以内。任命権も教育長だ。実際の委員構成は学識経験者2人、医師1人、アスベストの専門家2人の5人。保護者などは入っていない。

懇話会の権限は位置づけがなく、座長の選定方法や会議は座長が進行するといったことが記載されているだけ。

そのほか教育長の権限として、「必要があると認めるときは、懇話会に関係のある者の出席を求め、その意見若しくは説明を聴き、又は資料の提出を求めることができる」とある。あとは会議の基本公開や会議録の作成などが求められている程度である。

つまり、法的位置づけが明確でない要綱で、児童らをアスベストに曝露させた可能性のあるいわば“加害者”や“被告”の教育委員会トップの「教育長」が児童らのアスベスト曝露と健康リスクだけに限定して「意見を聴取」する場でしかない。行政対応の検証は最初から除外され、意見を聴くつもりすらない。

懇話会に権限がないということは、検討内容どころかその方法まで含めてすべて教育長の言いなりということだ。そんな懇話会の議論や結論は第3者の有識者会議としての独立性や中立性、透明性に疑問がある。そもそも市どころか教育長に懇話会の検討結果を尊重する義務もない。

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