◆市の主張を全面的に認定

こうした経緯から原因者が同社だとして市が損害賠償を求めて2017年3月名古屋地裁に提訴したのである。

1審でライフテック・エムは、
・市測定時に除去作業を開始していなかった
・負圧除じん装置にすき間が存在することが明らかにされていない。すき間があったとしても小さいので空気1リットルあたり700本という高濃度のアスベストが検出されることはあり得ない
・湿潤化剤の散布が不十分であったとしても装置の防じん率は99.9%でありアスベストの飛散に関係ない
・市の指示で負圧除じん装置の排出口がセキュリティ出入口に隣接する不適切な施工となった
──などと反論。

アスベスト飛散自体なかった、あるいは飛散があっても同社の責任ではないという主張だが、裏付けはまったくといってよいほど示されていない。

2021年3月、名古屋地裁(吉田彩裁判長)は市の検証結果に基づく主張を全面的に認め、同社に対し、市が請求した約2143万円全額の賠償を命じた。請求額の全額が訴訟で認められることは珍しく、市の完勝といってよい。

また下請けのアンサー(三重県桑名市)が元請けに対し、請け負い代金約3500万円の支払いを求めた訴訟でも、地裁はライフテック・エムに対し、施工したアンサーへの未払い金約295万円の支払いを命令した。つまり今回の不適正工事では元請けのライフテック・エムに全面的に責任があると地裁が認めたことになる。

控訴審では2月24日、名古屋高裁はライフテック・エムとアンサーによる控訴をそれぞれ棄却した。

前提事実は一部細かな補正がされた以外は1審と同じとされた。それどころか、訴訟の争点や当事者の主張も地裁判決に「記載のとおりであるから、これを引用する」と完全に省略。控訴した側の主張は1審とまったく変わっていないと判断されたことになる。

結局、高裁は市の請求は「理由があり」と認め、ライフテック・エムの反訴請求は「理由がなく」と切り捨てた。

高裁判決は情報公開で入手したため、一部個人情報として黒塗りされた部分があるが、同社の未払い金約295万円について施工業者のアンサーに支払うよう認めた1審判決が維持されたことを示す記載とみられる。いずれにせよ、基本的には1審判決に「記載のとおり」で、一部「控訴人らの各控訴理由に対する判断も含む」形で補正したにすぎない。

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