現安倍派の元代表として刑事告発された細田博之衆院議長。旧統一教会との関連やセクハラ疑惑とスキャンダルが続く。公式HPより。

自民党の最大派閥である「清和政策研究会」(清和会=現安倍派)が、2018年から20年までに開かれた政治資金パーティー「清和政策研究会との懇親の集い」において、20万円超のパーティー券を購入した政治団体からの収入合計1374万円を政治資金収支報告書(以下、収支報告書)にその明細を記載していなかったとして、当時代表だった細田博之氏(現衆議院議長)ら3人が東京地検に政治資金規正法の不記載にあたるとして、11月9日に刑事告発された。(フリージャーナリスト・鈴木祐太

◆3年分ものパー券収入が報告に不記載

「清和政策研究会」は現在の安倍派である。福田赳夫、森喜朗、安倍晋三と歴代総理大臣を輩出してきた名門派閥だ。岸田内閣では松野博一官房長官をはじめ、西村康稔経済産業大臣、西村明宏環境大臣、岡田直樹地方創生大臣らが所属している。

この安倍派のカネの問題について刑事告発したのは神戸学院大学の上脇博之教授。告発状によると、安倍派は2018年から2020年までの3年間で合計1374万円もの政治資金パーティー収入を収支報告書に記載していなかった。18年は8団体から434万円、19年は9団体から426万円、20年は10団体からの514万円のパーティー券収入があったにもかかわらずだ。

パーティー券を購入した政治団体の収支報告書には支払いが記載されており、購入してもらった安倍派の収支報告書に記載されていないのは辻褄が合わない。

TKC全国政経研究会が2018年に安倍派のパーティー券を購入したことを記載した収支報告書。安倍派の収支報告書には記載がなかった。

◆3年連続の不記載は異常 「赤旗」のスクープが発端

政治資金パーティー「清和政策研究会との懇親の集い」は、18年から20年までの間、東京プリンスホテルで毎年開催されており、18年が収入2億802万円に対して支出が約3223万円、19年が1億5338万の収入に対して支出約3352万円、20年が1億262万円の収入に対して支出2681万円となっており、安倍派の一番の収入源となっている。

政治資金規正法は、パーティー券を購入した者についての明細を記録することを義務付けている。そのため、会計簿や通帳などを見比べれば、その中に20万円を超えてパーティー券を購入した者があれば気づくはずであり、単純な会計のミスではないと、告発状では指摘している。確かに11団体のうち7団体が3年連続で記載されていないのは異常である。

この安倍派のパーティー券の不記載問題は、新聞「赤旗」日曜版のスクープ報道がきっかけで刑事告発につながった。

◆裏金作りではないのか?

刑事告発をした神戸学院大学の上脇博之教授は理由を次のように話す。

「20万円を超えてパーティー券を購入した政治団体が複数あったのに、それに気づかず、3年間もその明細を記載しなかった合計額が1374万円もあったというのは、あまりにも異常です。計画的ではないかとさえ思えてなりません」

さらにこの問題には、告発内容よりも深刻な点が隠されていると上脇教授は指摘する。

「政治団体の場合は収支報告書の制度があるので、私が不記載を発見できましたが、会社や個人の場合は収支報告制度がありません。もしかしたら同じように20万円超のパーティー券を購入した会社などで、明細が収支報告書に記載されていないものがあるかもしれません。そうであれば、1374万円の不記載は“氷山の一角”になります。

不記載の1374万円は、パーティー券の総売り上げに含まれていない可能性もあります。そうであれば、裏金作りのために記載されなかったことになりますが、企業の購入分の方が裏金作りになりやすいので、この点でも“氷山の一角”だったことになります。そうでないというのであれば、安倍派は会計帳簿など客観的資料を公表して疑惑を払拭すべきです」

政治資金パーティー券に関しては、購入した政治団体の収支報告書には20万円以上のもののみを記載すればよいことになっている。だが20万円以下のパーティー券購入ならば購入者の氏名や団体などは分からないのだ。

そのため、「抜け道」として使われていると指摘されることが少なくない。また、パーティー券を購入した団体や個人が、実際にパーティーに参加したかどうか知る術はなく、欠席分が事実上の寄附となっているとも指摘されている。

安倍派は政権与党・自民党の最大派閥であり、岸田内閣にも強い影響力をもっている。こんな法律の抜け穴を改正しようとすればできるはずである。「政治とカネ」の問題にも安倍派として取り組んでもらいたい。

■ 鈴木祐太 (すずきゆうた)
1981年香川県で生まれ。岡山、大阪で育つ。大学在学中から貧困状態にある子どもたち、特に被差別部落や在日外国人の子どもたちへの支援に関わり、小学校講師、派遣社員などを経てジャーナリズム活動を始める。フロントラインプレス所属。

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