(参考写真)厳寒の中で堆肥集めに動員された女性たち。「堆肥戦闘」期間中はあらゆる便所から人糞が消えるという。2015年1月中旬北朝鮮中部 撮影キム・ドンチョル(アジアプレス)

今年も年初恒例の「堆肥戦闘」が全国で行われている。小学生から労働党幹部まで、全国民がほぼ一か月にわたり人糞を集めて堆肥を作りに動員される。北部地域に住む取材協力者によれば、今年は1月7日から27日までの予定で始まった「堆肥戦闘」は、2月に入っても続いているという。(カン・ジウォン

北朝鮮では慢性的に肥料が足りない。化学肥料の国内生産と輸入だけでは必要量を賄えず、年明けとともに全国で一斉に「堆肥戦闘」に入るのが年中行事になって久しい。

「堆肥戦闘」には北朝鮮の全国民、全組織が参加する。約1月間だが国家総動員を実行することの目的は、肥料確保が死活的に重要だということに加え、権力の指令で人と組織を一糸乱れずに動かす社会の気風とシステムを維持することにもある。

◆労働者1人1トンがノルマ

「参加者に課せられる今年の課題(ノルマ)は労働者が1人1トン、扶養家族(主に家庭の主婦を指す)は500キロ、生徒と老人は300キロです」

両江道(リャンガンド)に住む取材協力者はこのように伝えてきた。ノルマは昨年より若干少なめな模様だ。その分、ごまかしが出ないよう処罰規定が厳格になったという。 ※堆肥生産のノルマが全国均一なのか、地方間で差があるのか確認できなかった。昨年北部地域では労働者のノルマは1.5トンだった。

地域ごとのノルマ遂行計画を人民委員会(地方政府)、洞事務所(役場)、企業が責任を持って進めるようにし、堆肥の数量をごまかしたり、賄賂を渡して計画を達成したことにしたりするような不正が発覚した場合、法務部を通じて処罰すると、事前に通知があったという。

また個人においても、過去に横行した「堆肥戦闘」に参加する代わりにお金を納める行為を、男女、地位、年齢にかかわらず一切容認しないと、当局は警告した。ただ、農村に堆肥を運搬するための車両やガソリンの費用を出すことで、参加を逃れている人は今年もいるという。

平壌の中央機関の職員たちも「堆肥戦闘」に動員されたという記事が、2023年1月14日の国営メディアに一斉に掲載された。

◆ウンチするのにバケツを持っていく

さて、今年の「堆肥戦闘」期間、街中ではどのような光景が広がっているのだろう。両江道の協力者の報告をまとめてみた。

「労働者は毎朝、人糞の入った袋を背負ったり、『クルマ』(小型リアカー)を引いたりして出勤します。工場では庭を番号で区分けして、そこに職場別に集めた堆肥を積んでいきます。

所属する団体別、企業別、人民班別に生産競争をさせていて、組織で設定した区間では他の団体や人民班の人が人糞の収集をできないようにします。

ウンチをする時には共同便所にバケツを持って行きます。その自分のウンチに石炭の灰や残飯、排水場のドロなどを混ぜて持っていかなくてはならないので、毎朝うんざりさせられます」

★新着記事