◆収穫期の今、なぜ軍兵士が飢えるのか?

各地の軍部隊で兵士に栄養失調が発生するのは、今に始まったことではない。1990年代初盤から供給が不足していたことは、兵営生活経験のある脱北者が数多く証言しているところだ。また石丸次郎も1993年7月、1994年12月に朝中国境を取材した際、空腹の兵士らに食べ物をねだられる経験をした。

北朝鮮軍の食糧の出処は、主に次の3種類がある。

1 協同農場の収穫のうち一定部分は軍に納められる。「軍糧米」と呼ばれる。
2 輸入食糧。
3 兵士自らが「副業地」と呼ばれる部隊の畑でトウモロコシや野菜などを栽培する。

※すべてか一部なのか定かではないが、金正恩政権は今年の春に、軍の「副業地」を協働農場の耕作地に編入させた。

軍に供給される食糧の大部分は1と2である。つまり国家が体系的に確保した分だ。それが必要量を満たせないため、兵士に栄養失調が蔓延することになる。

主食のトウモロコシやジャガイモの収穫が終わり一息つけるはずの今、なぜ軍隊に食糧が出せないのか? 

北朝鮮政府は今年4月頃から、国営の食糧専売店で販売する白米とトウモロコシの確保ができず、軍用の食糧を転用して急場をしのごうとした。市場での食糧販売を今年1月に禁じてしまったため、食糧専売店での販売を止めるわけにいかなかったからだ。転用は6月まで続いた。そのつけが今、兵士の飢え、兵士による犯罪の多発となって現れていると見られる。

なお、軍部隊の食糧供給の不足が全国的に発生しているのか、アジアプレスでは確認できてない。(了)

※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。

 

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