2023年2月の軍事パレードに登場した朝鮮人民軍の兵士。朝鮮中央テレビ画面より引用。

北朝鮮北部の両江道(リャンガンド)の恵山(ヘサン)市で9月25日、男性1名が銃殺刑に処された。動員された住民の前での公開処刑だった。恵山市で公開処刑が執行されたのは8月30日に9人を銃殺して以来今年に入って2度目だ。市内に住む取材協力者が伝えてきた。(カン・ジウォン

◆8月には9人を銃殺していた

取材協力者が公開処刑の実施を知ったのは9月25日の朝だった。8月30日に9人を銃殺した場所と同じ恵山飛行場で、午後に執行するので集まるようにと当局から通知が来た。この協力者は8月の銃殺を目の当たりにして強いショックを受けたため、体調不良を理由に行かなかった。執行後に、協力者は動員された人らから聞き取りを実施。その状況を次のように説明した。

「当初は2人を銃殺すると言われていた。1人は女性で、夫を殺そうとして未遂に終わった人だった。結局死刑が執行されたのは男性1人。戦時物資の医薬品を個人の薬商人に横流しした罪だった。コロナで中国の医薬品が入らくなった時に大儲けしたということだった。『国家の医薬品を私利私欲のために盗んだ者は、厳重な法的処罰を受ける』と現場で宣告したそうだ」

医薬品の横流しで銃殺とは量刑が重すぎるが、金正恩政権は8月から、民間医療と医薬品の個人販売を根絶すること住民に通達。厳罰を科すことを予告していた。

◆言うことを聞かぬものは容赦しない

取材協力者が説明を続ける。

「7月に(コロナ)非常防疫本部で調査を行い、(戦時物資の)倉庫で医薬品の空き瓶が見つかって4人捕まっていた。だが、3人はうまく逃れて1人だけが銃殺になったということだ。今回の銃殺を機に、医薬品を販売、流通している者は自発的に申告せよと当局が通告した」

8月に続き、今回も中国と隣接する恵山市で公開銃殺を行ったのは、情報がすぐに世界に伝わることを承知の上でのことであろう。未確認であるが、アジアプレスでは清津(チョンジン)市、咸興(ハムン)市でも、8月以降に公開処刑が執行されたという情報に接している。

究極の見せしめである公開処刑の再開は、金政権が徹底した恐怖で住民を統治すること決めた表れだと考えられる。協力者は「国がするなということやれば容赦しない、ただ言われたことだけを熱心にしていればよいということだ。本当に人を撃ち殺すから、皆気を付けようと言い合っている」と、今の空気について述べた。

またこの協力者は、安全局(警察)の関係者から聞いた話として、恵山市には、殺人、暴力行為、集団逃走などの罪名で銃殺対象になっている者が7人かいると伝えた。7人は最終裁判の結果待ちで、家族たちが何とか処刑を免れようと奔走しているのだという。

9月25日の銃殺に関しては、米国のRFA(アジア自由放送)も29日に報じていた。RFAによれば8月30日の公開処刑の時は、恵山市内の機関、企業、人民班を通じて大勢の住民が動員されたが、先月25日のそれには、機関、企業の労働者は動員されなかったという。

※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。

北朝鮮地図 製作アジアプレス

 

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