大阪市では2022年度における建物改修・解体工事におけるアスベスト(石綿)調査結果の報告が約1万6300件に上り、立ち入り検査をした3割弱で法違反が見つかっていた。あらかじめ指導していたにもかかわらず、事前調査の報告をおこたる違反も計112件に上った。また約5%で石綿の見落としも見つかったという。(井部正之)

2021年8月に大阪市が立ち入り検査して発見した違法除去工事のようす。吹き付けアスベストがあるのに一部を隔離など法で定められた飛散防止措置なしに除去していたという(情報公開請求で入手)

◆立ち入り検査を倍増して対応 9月7日に開催された市議会の環境対策特別委員会で報告された。 2022年4月から建物などの改修・解体時に石綿の事前調査結果を都道府県や所轄の労働基準監督署などに報告することが大気汚染防止法(大防法)や労働安全衛生法(安衛法)石綿障害予防規則(石綿則)で義務づけられた。 この制度により、大阪市には同年度に計約1万6300件の工事が報告された。内訳は改修工事が約1万3850件(約85%)と圧倒的に多く、解体工事は約2450件(約15%)だった。 解体工事のうち、「石綿あり」と報告されたのは約1040件(約42%)。「石綿なし」が1410件(約58%)と過半を占めた。 市は新たな規制の導入に合わせて2022年度に対応を強化しており、前年度比2.5倍の計1925件で立ち入り検査を実施した。このうちおもに解体現場に対し、工事着手前に立ち入りした845件のうち、約4分の1にあたる233件で石綿事前調査結果報告の内容に不備や現場に石綿調査結果の掲示がないなどの大防法違反が見つかった。 とくに845件のうち「石綿なし」と報告された347件について市が立ち入り検査で調べたところ、約5%(4.89%)にあたる17件で石綿の見落としが判明し、指導したという。 この件を質疑した大西聖一市議(大阪維新の会)は「石綿あり」が約4割との報告について、「私は少ないと感じております」と指摘した。続けて2022年度に市が立ち入り検査で17件の石綿見落としを見つけたことに言及し、「今後さらに指導を強化すればまだまだ見つかってくるんじゃないか」とさらなる対応を求めた。 市は届け出窓口や電話などで指導したにもかかわらず、石綿の事前調査がされなかったり、報告がなかった事例が計112件に上ったとして指導したことを報告するとともに「今後も引き続き現場立ち入りを強化し、石綿の規制強化に取り組んでまいります」と返答した。 ◆有資格者による立ち入り検査推進 大西市議は「まだまだ万全とは言えない状況」として今後の対応を尋ねた。 市は石綿の事前調査は10月から有資格者による実施が義務づけられたことに触れつつ、「事業者指導を徹底するため、現場立ち入りを行う職員が、より一層の知識習得を目的としまして国が実施する建築物石綿含有建材調査者講習を担当職員が引き続き受講し、規制対応の充実に取り組んでまいります」と言及。 さらに「解体工事現場におきまして、法令で定められた必要な知識を有する者によって適正な事前調査が実施されているのかどうかなど、立ち入り指導を強化し、石綿飛散防止に向けた取り組みを進めてまいります」と続けた。 すでに述べたように10月からは石綿の事前調査は有資格者による実施が義務づけられた。ようやく“素人”による石綿調査が禁止された一方で、現場の指導・監督を担う行政職員は資格の取得が不要とされている矛盾がある。 以前からとくに自治体職員の知識不足で適正に指導ができない実態が問題視されてきた。大阪市のように環境部局できちんと「建築物石綿含有建材調査者」講習を修了し、「必要な知識を有する者」が立ち入り検査をするというのは、先進的な取り組みであり、歓迎したい。ほかの自治体も参考にすべきだ。 また石綿調査結果報告制度の施行と合わせて立ち入り件数を2.5倍に増やし、その結果についてきちんと分析もしているところからも大阪市が石綿対策に積極的に取り組んでいることがよくわかる。 通報しても3日も現場に来ないことのある東京都板橋区などはぜひ見習うべきだろう。

 

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