◆告発と検察捜査後の報告書訂正は「犯罪の自白」だ

政治団体「志師会」(二階派)が、1月18日に政治資金収支報告書(以下、収支報告書)を訂正して総務省に届け出た。だがこの新たな訂正は、一連のパーティ券不正に対する刑事告発と、東京地検特捜部による事情聴取や捜査を受けてからのことであり、訂正自体が二階派による「犯罪の自白」だとして、二階俊博会長、山口壮事務総長、宮内秀樹衆議院議員、福井照元衆議院議員ら16人が刑事告発された。(フリージャーナリスト・鈴木祐太

刑事告発したのは、一連の自民党5派閥不記載事件の調査を続けている上脇博之神戸学院大学教授だ。上脇教授の複数回に渡る刑事告発を受け、東京地検特捜部は二階派関係者への事情聴取や事務所などの関係先への強制捜査を行った。

その結果、二階派は新たに18日になって収支報告書を訂正したが、もし刑事告発や強制捜査がなければ、二階派は訂正することはなかったはずだと、上脇教授は告発状で厳しく批判している。二階派による訂正はまさに「犯罪の自白」に当たるというわけだ。

派閥「志帥会」の会長である二階俊博元自民党幹事長。HPより

◆企業のパーティ券購入分の記載は初

今回の二階派の訂正には注目すべき点がある。一連の自民党5派閥のパーティ券収入不記載事件で、初めて企業による20万円を超えるパーティ券収入の明細が記載されたのだ。

二階派は2022年の政治資金パーティで菊池建設から40万円、武蔵産業から30万円、西部興業から30万円、多摩住宅サービスから40万円の、合計140万円の収入があったと新たに訂正した。なぜこれまで記載しなかったのか? なぜ今になって訂正・記載するのか?

◆二階会長は3年で計1億7680万円のキックバック受けていた

また、新たに20年から22年までの期間に総額6533万円の支出があったと記載された。これらの支出先は二階派所属の政治家の関連政治団体である。つまり、いわゆる「キックバック」と言われるものだ。

会長である二階氏の政治団体「新政策研究会」が20年6180万円、21年6220万円、22年5280万円、合計1億7680万円のキックバックを受けていた。この他にも各政治団体に関係する国会議員と会計責任者が今回の刑事告発の対象となった。

◆二階派「キックバック」議員一覧

二階派で、二階氏以外でキックバックを受けていた政治家の政治団体と額は以下の通りだ。

・平沢勝栄衆議院議員、政治団体「勝栄会」 計1072万円(20年:280万円、21年:792万円)

・武田良太衆議院議員、政治団体「武田良太政策研究会」 計1172万円(20年:388万円、21年:706万円、22年:78万)

・林幹夫衆議院議員、政治団体「大樹会」 計1512万円(20年:846万円、21年:486万円、22年:180万円)

・福井照元衆議院議員、政治団体「くにのかたち基本政策研究会」 計776万円(20年:358万円、21年:418万円)

・宮内秀樹衆議院議員、政治団体「秀明会」 計145万円(20年:26万円、21年:21万円、22年:98万円)

・衛藤晟一参議院議員、政治団体「新政策研究会」 22年:80万円

二階派の2020年の翌年への繰越額は当初、1799万円だったが、今回の修正で1億5917万円となった。この差額の1億4118万円が裏金としてプールされていたということだ。また、20年のパーティ券収入は2億2767万円とこれまで記載されていたが、実際は3億2047万円だった。パーティ券収入を実際より過少申告することによって生み出されていたこの差額が裏金になるという仕組みだ。

今回の収支報告書の訂正によって、20年は約1億4118万円、21年は約1億3244万円、22年は1億4837万円が裏金としてプールされていたことが発覚し、政治資金規正法の不記載罪に当たるとして刑事告発の対象となっている。

告発対象は二階会長の他、20年の収支報告書作成時の山口壮事務総長、21年22年の武田良太事務総長で、派閥幹部議員が会計責任者との共謀なしに、裏金プールはあり得なかったとしている。  

◆1億3000円を超える裏金が発覚二階派

これまで、上脇教授が刑事告発してきた二階派の20万円超のパーティ券収入明細不記載額1576万円とは別に、今回の収支報告書の訂正でキックバックとして合計6533万円、1億3000万円以上の裏金がプールされていたことが分かったわけだ。

今回の訂正は、現在総務省で公表されている3年分のみで、それ以前のものは含まれていない。いったい、いつからキックバックや裏金作りが始まったか分からないが、実際はもっと大きな額がキックバックされ裏金になっていたと考えるのが自然だろう。

◆主権者たる国民への重大な背信

刑事告発をした上脇教授は次のように指摘する。

「茂木派の平成研究会が収支報告書に記載せずプールして密かに保有していた裏金額は計280万円、岸田派はその9倍近い2501万円でした。二階派は茂木派の約52倍、岸田派の約6倍の1億4837万円超でした。異常な金額です。

茂木派も岸田派も議員側へのキックバックはありませんでしたが、二階派では3年間に当時の7人の所属議員の資金管理団体にキックバックしていました。二階派も所属7議員の資金管理団体側も各収支報告書に記載せず、密かにキックバンクしていたのです。派閥と議員の間で不記載について合意がないとできないはずです。一方だけが記載すると他方の不記載がバレルからです。

主権者たる国民への重大な背信ですから、このまま見過ごすことはできませんので、刑事告発しました。東京地検特捜部は一部の者だけを起訴していますが、私の告発を受理し、捜査を尽くして議員らも立件すべきです」

◆政治監視の体制が脆弱すぎる

一連のパーティ券不正事件は、「しんぶん赤旗日曜版」の調査報道で発覚し、上脇教授が刑事告発したことで始まったものだ。最初の報道と刑事告発は2年前であるが、大手メディアが報道を始めたのは、なんと昨年11月になってからだった。

これほど大きな「政治とカネ」の闇があったのに、東京地検が本格的に動き出すまでメディアはさしたる関心を示さず、そのため多くの有権者も知りようがなかったのである。一連のパーティ券不正事件は、「政治とカネ」を巡る報道の在り方、政治を監視する体制の脆弱さも浮き彫りにした。

私たちの社会が「政治とカネ」の問題にどのように向き合っていくのか。そのことが問われている。

 

■ 鈴木祐太 (すずきゆうた)
1981年香川県で生まれ。岡山、大阪で育つ。大学在学中から貧困状態にある子どもたち、特に被差別部落や在日外国人の子どもたちへの支援に関わり、小学校講師、派遣社員などを経てジャーナリズム活動を始める。フロントラインプレス所属。

 

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