中国丹東市のレストランで働く北朝鮮の女性従業員。彼女ら派遣労働者の労賃も北朝鮮政府にとって大きな収入源になっている。2021年7月遼寧省丹東市で撮影アジアプレス

2023年の中国の対北朝鮮貿易統計によると、カツラや付けまつげなどの毛性製品の委託加工輸出が、過去の主要輸出品だった鉱物資源を超えて年間1位になった。一方、その生産現場で加工労働に従事する住民たちは、どのような待遇や環境にいるのだろうか? 北部地域に住む取材協力者たちから話を聞いた。(チョン·ソンジュン

◆ カツラ、まつげなど毛性製品が対中輸出の56%占める

中国の税関当局が発表した対北朝鮮貿易統計によると、2023年度は計1680トンに達するカツラと付けヒゲ、付けまつげなどの毛性製品が北朝鮮から輸入された。金額は約1億6300万ドルに及び、1月を除く毎月、北朝鮮による輸出1位を占めた。

2023年12月の毛性製品の輸出額は1520万8813ドルに及ぶ。これ以外の品目の輸出総額である949万9360ドルの1.6倍に達する莫大な金額だ。毛性製品に支えられ、2023年の北朝鮮の対中国輸出額は、パンデミック以前の2018年の2億1314万7000ドルを上回る2億9188万7000ドルに達した。毛性製品の割合は56%に及ぶ。

◆ なぜカツラなのか?

カツラなどの毛性製品が、かつて稼ぎ頭であった各種鉱物を凌駕する重要輸出品に浮上したのは、言うまでもなく 2017年に北朝鮮による核実験とミサイル発射に対する国連安保理の制裁で、ほとんどの鉱物の輸出が全面禁止されたためだ。

制裁を回避でき、かつ中国市場で大きな需要がある品目として北朝鮮が新たに見つけたのが毛性製品だ。中国の業者から羊毛などの原材料を輸入しカツラや付けまつげに加工して輸出する労働集約型の委託加工である。北朝鮮国内では、この仕事のことを一般的に「賃加工」と呼んでいる。

「『賃加工』労働が本格的に広まったのは2018年からだ。貿易会社が、募集した人員に2週間の研修をした後、仕事を与えるやり方だった。当初は、主にカツラや帽子、ビーズの飾り物のようなものを作らせた。カツラは1つを作るのに普通3日から1週間ほどかかるのだが、対価として白米2キロを支給した。 かつらの形によっては3~5キロを渡すこともあった」(2018年の両江道の協力者の説明)

過去8年間の朝中間の貿易額の推移。中国税関総署の発表値を整理した。(制作 アジアプレス)

◆毛性製品の「賃加工」が好調で各地に事業拡大

ところが、毛性製品が中国への輸出品として重要性が増すと、「賃加工」労働に対する需要も急増。2020年のパンデミック発生まで、貿易会社は競うように労働者を雇って輸出にいそしむようになった。

「成果に応じて待遇が上がった。ひと月に白米25キロ、大豆油1リットル、現金で中国100元をもらえることもあった。仕事は材料を受け取って自宅でやることもあるし、作業場に集まってすることもあった」と、両江道の別の協力者は述べる。

当初は、一部の貿易会社が中国との国境地帯で小規模に始めた毛性製品の「賃加工」事業だったが、朝中両国がゼロコロナ政策を修正した2022年末からは、国家が中心となって生産を拡大させるようになった。「賃加工」に人材を手当てするために、吉州(キルジュ)、金策(キムチェク)、咸興(ハムン)などの他都市で事業を拡張しているという。

★新着記事