脱北者のチャン・ハンギルさんが直接見た公開裁判を再現して描いた絵。脱出した中国で2000年頃に制作。

北朝鮮当局が若者による秩序違反や犯罪に対して、思想闘争や公開裁判などを通じて厳しい統制で臨んでいる。恐怖で若者の意識を変えようという試みを強化している。(カン・ジウォン/石丸次郎)

◆窃盗や迷信行為で若者男女4人を公開裁判に

北部地域に住む複数の取材協力者によれば、金正恩政権は2024年を「青年革新のための闘争の年」にするとの方針のもと、全国の労働党組織と保安(警察)組織に対し、若者による秩序違反や「非社会主義的行為」、犯罪については、容赦なく厳罰するよう指示を下したという。

その具体例といえる出来事があった。若者だけを対象にした「公開暴露集会(公開裁判)」が2月22日、両江道(リャンガンド)の恵山(ヘサン)市で行われたのだ。その場に参加した取材協力者は、裁判の概要を次のように説明する。

「審判を受けたのは除隊軍人1人を含む男3人と女1人。窃盗、強盗、迷信行為の罪を問われ、教化(懲役)2年が言い渡された者がいた。さらに(別の)7人の名前読み上げて、調査を進めていると言っていた」

北朝鮮では一切の宗教行為が禁じられており、占いや祈祷も迷信行為として法的処罰の対象である。

この日の公開裁判は恵山市の中心部で行われ、若者が多数動員されていた。

「参加させられたのは大学生と高級中学生(高校生に該当)、青年が中心で、女性同盟や人民班には参加は求められなかった。動員された若者たちに対して『非法行為を隠蔽するようなことがあれば、同罪である』と通告した」

なお、この日の「公開暴露集会」については、米国のRFA(自由アジア放送?)も2月23日付で報じている。

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