山谷えり子参院議員は旧統一教会との関りや裏金疑惑についてまともに説明しようとしないと批判が多い。議員のHPより

安倍政権下で国家公安委員長や拉致問題担当大臣などを歴任した山谷えり子参院議員(比例全国区)が代表を務める政治資金団体「21世紀の会」が、2018年以降に安倍派(清和政策研究会)の政治資金パーティの収入から2403万円のキックバックを受けていたにもかかわらず、政治資金収支報告書(以下、収支報告書)に記載しなかったとして、4月15日、山谷議員ら3人が東京地検に刑事告発された。(フリージャーナリスト・鈴木祐太)

◆安倍派からのキックバックは2403万円不可解な説明

告発したのは神戸学院大学の上脇教授。告発状によると、山谷議員の「21世紀の会」は、2018年に484万円、2019年に400万円、2020年に441万円、2021年に568万円、2022年に510万円のキックバックを安倍派から受けていた。その額は合計2403万円に上る。

山谷議員のブログには「これまでの処理方法については、清和会事務局からの説明通りに事務所で処理していたと報告がありましたが(中略)ノルマ超過分については、これまで何らかの支出にあてることはなく事務所内に留めていたと報告を受けております」と説明している。

しかし、処理をして事務所内に留めていたにもかかわらず、収支報告書には記載していなかったという、まったく不十分でよくわからない説明だ。

山谷議員の「21世紀の会」が今年1月31日に訂正した安倍派からのキックバック分の一部を寄付を受けたと訂正した収支報告書。日付不明の不可解。

◆山谷議員の著書をなぜ二階議員の政治団体が154万円分も大量購入?

「21世紀の会」は安倍派からのキックバックについて、今年1月31日付けで収支報告書を訂正している。しかし訂正はそれだけではない。不可解な書籍販売の収入と、購入の支出に関しても訂正していた。何が不可解なのか説明しよう。

「21世紀の会」は、2021年4月28日に二階俊博元自民党幹事長が代表を務める政治団体「新政経研究会」に154万円で書籍を販売したと、1月31日に加筆訂正した。二階議員の「新政経研究会」の収支報告書も「21世紀の会」から154万円で購入したと訂正されている。

二階元幹事長は、今年に入って訂正した際、大量の書籍購入があったことが注目を浴び、その書籍名一覧を公表した。その資料を見ると、21年1月に扶桑社から出版された山谷議員の著書である『新しい「日本の歩き方」 まだまだ知らない魅力がいっぱい、旅で元気になろう』を154万円分購入したと記載されている。

しかし2018年以降、山谷議員の「21世紀の会」が書籍を大量購入したとの記載は、5月7日に扶桑社に支払った123万2千円分がある。つまり二階議員の「新政経研究会」が山谷議員の著作を購入したのは、仕入れる11日も前なのである。まだ仕入れもしていない本を販売していたというのは、まったくつじつまが合わない。

この転売をなぜ、これまで収支報告書に記載しなかったのだろうか。一連の自民党派閥の不記載・裏金事件の告発をし続け、今回山谷議員を告発した上脇教授は不可解な書籍転売について次のように話す。

山谷議員の「21世紀の会」は、まったく不可解な書籍購入分についても収支報告書を訂正したが、本の仕入れ前に二階議員の「新政経研究会」に販売している不可解な事実が露呈した。

◆仕入れ日より11 日も前に自著書籍を大量販売の不可解

「収支報告書上では、2021年5月7日に支払いをした書籍を、その10日前の4月28日に転売したことになります。保有しない書籍を販売したことになり矛盾します。支払いが遅れただけだったとしても、そもそも何のために書籍を購入したのか不可解です。政治団体なのに、転売して30万8000円の利益を得ているのも不自然」

上脇教授はこのように疑問を呈した上で、二階議員側が安倍派の山谷議員から大量の書籍を買ったのは不可解だと指摘した。

「二階元幹事長の政治団体が書店からではなく山谷議員の政治団体から購入するのも不自然です。山谷議員は二階派ではないので、二階元幹事長はキックバックのカネからではなく党本部から受け取った政策活動費名目の寄附金から支出し、書籍は受け取らず山谷議員側がそれを配布したのではないかとの疑念さえ生じます。そうであれば二階元幹事長は山谷議員の政治団体に寄附したことになりますが、その記載は収支報告書にありません。いずれにせよ、山谷議員も二階議員も客観的資料を示して真相を語るべきです」

上脇教授は告発状の最後に、山谷議員が安倍派からのキックバックを「事務所で処理していた」と弁明しながら、支出(=処理)せず全額繰り越していることの矛盾を指摘している。そして、真実は山谷議員個人に対する寄附だったのではないかとの疑いを禁じ得ないとして、真相の解明を求めた。

不可解な転売が明るみになった扶桑社発行の著書の表紙。

◆「正直」掲げる山谷議員の不誠実を問う

山谷議員は安倍内閣の国家公安委員長、自民党の拉致問題対策特命委員会事務局長という要職を務め、安倍一強時代を支えてきたひとりだ。しかし、たびたび旧統一教会から選挙支援を受けるなど密接な関係があると指摘されてきた(本人は否定)。

山谷議員のホームページに次のように書かれている。「日本人が大切にしてきた品位、節度、調和、正直、親切、勤勉を重んじ、伝統文化、体験学習、職業教育を充実させます」

山谷議員は裏金事件で、自民党で役職停止1年という処分を受けている。裏金と不可解な書籍転売について、今こそ「正直」に包み隠さず語るべきである。

 

■ 鈴木祐太(すずきゆうた)
1981年香川県で生まれ。岡山、大阪で育つ。大学在学中から貧困状態にある子どもたち、特に被差別部落や在日外国人の子どもたちへの支援に関わり、小学校講師、派遣社員などを経てジャーナリズム活動を始める。フロントラインプレス所属。

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