畑の中に建てられた警備哨所で、作物泥棒と住民の国境接近を監視する男性。民間武力「労農赤衛隊」の農場員とみられる。2023年9月下旬に平安北道の朔州郡を中国側から撮影アジアプレス

北朝鮮当局が農繁期を迎えて、都市に住む農村出身者を強制的に帰農させようとしていることが分かった。個人が不法に耕作していた畑の没収が進められており、協同農場で耕作する人員を確保することが目的だ。一方で当局は、今年も農作業の重要性を強調して農村総動員令を発して住民たちを急き立てている。2~3月に咸鏡北道(ハムギョンプクド)の取材協力者が伝えてきた。(チョン·ソンジュン / カン·ジウォン

◆個人が耕す畑を没収し農場へ移転

ごく一部の国家認定私有地を除き、北朝鮮の土地は原則的には国家所有であり、農業活動のほとんどは協同農場で行われている。しかし、1990年代以降、配給制度がほぼ崩壊し、農民と農村付近の住民たちが、山の傾斜地や石だらけの畑などを開墾して不法に耕す、いわゆる「小土地」と呼ばれる不法耕作地が全国に出現した。

この数年間、当局は「小土地」をはじめとする不法営農地に対する取り締まりを強化してきたが、今年はあらためて大がかりな「小土地」調査に乗り出した。取材協力者が調べたのはA農場。咸鏡北道では中間規模で、農場員数は約500人だ。

個人の不法営農地に対する今回の調査は、道農村経理委員会が主管し国土監督隊が協力して進めているという。

※道農村経理委員会:道内の協同農場の営農地を総合的に監督、統制する行政機関
※国土監督隊:山や河川、水産など国家の自然と資源を保護、監督する機関

「周辺の『小土地』を全数調査し、農場に帰属させて作物を植えるか、それとも山林を造成するかを決めるという方針です。(農場に)帰属させない土地でも、少なくとも1~2年は背の低い作物(大豆や唐辛子など)を植えさせると言っている」

没収した畑に植林するにしても、木が大きくなるまでは最大限、耕作地として活用しようという意図だと見られる。

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