
<北朝鮮特集>金正恩氏が挑む農政改編とは何か(1) 農場から「協同」が消えた 農業関連法規を大幅見直し
「小土地」とは、北朝鮮で個人の不法耕作地を指す言葉である。配給制度がほぼ崩壊した90年代、「小土地」は住民にとって国家による配給や分配を超える重要な食糧調達手段であった。金正恩政権は、新たな農政改編の一環として、これまで当局の取り締まりの目を避けながら続いてきた「小土地」の耕作の全面的な禁止を打ち出した。今、農民らの不安が高まっている。(チョン・ソンジュン/カン・ジウォン)
◆減少した分配に代わる「小土地」
「小土地」は、1990年代の「苦難の行軍」と呼ばれる社会パニックによる食糧難の時代に、農民が生き残るために山や荒地を自力で開墾し農作物を作り始めたことから始まった。
その後、次第に近隣の都市住民まで「小土地」耕作に参入する。生き延びるための手段だったとはいえ、無秩序な「小土地」開墾の増大によって、北朝鮮の山からは木が消えてしまった。
◆写真で見る「小土地」
「小土地」とは何か。写真で見てみよう。

写真1は、2010年5月に咸鏡北道茂山郡を中国側から撮影したものである。山肌には樹木が一本も見られない。見事に頂きまで耕されている。北朝鮮住民の生存のための執念を見ることができる。傾斜のきつい山を上って作った畑の収穫物を食べ、あるいは売って生きたのである。

写真2は、2014年5月、両江道恵山市の郊外を、やはり中国側から撮影したものだ。山全体に「小土地」が密集しているのがわかる。
もちろん、「小土地」の面積や生産高に公式な統計は存在しないが、多くの家庭で、「小土地」の収穫は、国による食糧供給…労働者への配給や農民への分配…を上回るほど、住民にとって重要な自活手段であった。その一部は市場に流れ、都市の食糧価格を安定させる役割も果たしてきた。
しかし、無分別な開墾がもたらした山林の荒廃は、北朝鮮の頻繁な洪水発生の原因ともなった。
国土のほとんどが国有地である北朝鮮では、「小土地」の耕作は違法であるが、当局は規制しつつも、長くこれを黙認せざるを得なかった。「小土地」を禁止すれば、住民の暮らしが危うくなることを知っていたからだ。
しかし、金正恩政権発足後、当局は「小土地」耕作を禁じて植樹させ、森林を回復させる努力をしてきた。それでも、コネや賄賂を通じて黙認してもらい、「小土地」耕作はずっと続いて来た。