
5月上旬、北朝鮮当局が住民を対象に世界情勢に関する講演を開き、ウクライナ戦争を「ロシア人民による領土奪還のための愛国的な戦争」と説明したことが分かった。金正恩政権は、昨年10月頃から秘密裏に自国兵士をロシアに派遣しウクライナ軍との戦闘に参加させていたが、4月下旬になって初めて、派兵を公式に認めた。「情勢講演」はロシアとの急速な関係深化の意義を宣伝するのが目的と見られる。講演に参加した協力者が伝えてきた。(洪麻里/カン・ジウォン)
◆労働党宣伝部による「情勢講演」
両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)市に住む取材協力者によれば、「情勢講演」があったのは5月7日だ。
「ロシアに軍隊を派遣したからなのか、久しぶりに世界情勢に関する講演があった。女性同盟員が集められ、両江道の党宣伝部の幹部が直接話をした。テーマは『友邦国との親善協力関係がなぜ重要なのか』だった」と述べた。
※女性同盟:正式名称は「朝鮮社会主義女性同盟」。主に職場に籍を持たない主婦で構成される。
◆「金正恩元帥は世界情勢を思いのままにしている」

協力者によると、講演の主な内容は以下の通りだ。
―米国がウクライナに武器を提供して、ロシアに脅威を与えた。ウクライナ戦争は、ロシア人民による領土奪還のための愛国的な戦争だ。
―帝国主義者たちの策動を打ち負かすため、ロシア、中国、発展途上国が反旗を翻している。金正恩氏は情勢を見通し、先頭に立って世界情勢を思いのままにしている。
―我が国の革命に有利な局面であり、我々の自立、自主の原則に基づいて、友好国との親善協調関係を形成していかなければならない。
―今、米国と日本、韓国が情勢を利用して武器を売って金儲けをしている。
しかし、講演では北朝鮮軍の参戦については言及がなかったという。
次のページ: ◆「兵士がたくさん死んだから講演したのか」との反応も... ↓
1 2