戦争だけでなく、これらの様々な問題に対処するために、軍事、外交、政治、経済など、あらゆる面で取り組まなければなりません。みんなが法律に従って誠実に向き合い、行動し、決断すれば、すべてがうまくいくかもしれません。でも、その道のりはまだ長いでしょう。私は学者や専門家ではなく、ただの兵士です。目の前のこの現場で、なすべき仕事をするだけです。

戦争については、政治的な決断、外交的な決断を誰かがしなければならない。もちろん、それは不利な形ではないように。もし私たちが武器を捨てたとして、ロシア軍が撃ってくるのをやめるという保証がどこにあるでしょう」

取材に訪れたこの日は、ちょうどミハイロ曹長の誕生日だった。復活祭の前だったこともあって、部隊からは小さなかわいらしいケーキの差し入れがあった。(2024年4 月・撮影:アジアプレス)
差し入れケーキのシュガープレートには旅団章。第56独立自動車化歩兵旅団司令部はマリウポリだったが、町を制圧され撤退。その後はバフムト、チャシウ・ヤル攻防戦に投入。(2024年4 月・アジアプレス)

塹壕のなかで、ミハイロ曹長は、複雑な胸の内を語ってくれた。

故郷を守りたいという思い、多大な犠牲と武器不足、戦争の見えない先行き。兵士たちは苦悩していた。ウクライナ軍が苦戦している背景は、武器弾薬不足だけではない。侵攻が始まった3年前、兵士たちの士気はとても高かった。反転攻勢が失敗し、死傷者が絶えず、士気は低下していった。家族の心理負担も大きい。指揮官の戦死や解任で、指揮経験の少ない将校が無謀な作戦を命令して、さらに犠牲が増える事態も複数の前線で起きている。兵士たちは、厳しい戦いを強いられている。

 

(※取材時から少し時間が経過しての掲載ですが、部隊配置などの情報を考慮して時間差が出ています。また任務中の兵士のフルネームが出せない場合があります。ご了承ください)

 

<ウクライナ東部>兵士の肖像 (1) 前線の衛生兵 「精神力は極真空手で鍛えました」(写真14枚)

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<ウクライナ東部>兵士の肖像 (2・後編) 「若い兵士の死はあまりに悲しい」 砲兵部隊 写真13枚

 

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