「ドローンが戦場を変えました。新しい技術を駆使した、新しい戦争です。子どもと遊ぶために作られた、おもちゃのようなドローンでさえ、敵を翻弄し、苦しめ、追い詰めるんです」
職人の作業工房のような部屋では、別の兵士が工具を手に、機体を黙々と組み立てていた。ネジで組み合わせた小さな金属シャーシとメカ機構は、ミニ四駆にさえ見える。わきに置かれたテスト弾頭が、これが「兵器」なのだと気づかせる。
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おもちゃや家電からの転用部品に、ソ連時代の弾頭を改造して取り付ける。約50センチの機体で、1.5キロの爆弾を搭載できるという。
「大砲の砲弾なら1発で何千ドルもします。でも、この小さなドローンは数百ドル。十分の一の価格ながら、命中率は格段に高い」
これまで、T-90戦車、BMP戦闘車、TOS多連装ロケット装軌車などを攻撃して、成果を上げたという。
ダイバー班長は話す。
「侵攻で、私も、そして家族の人生もひっくり返りました。このドローンで戦局を打開し、すべてをひっくりかえし、勝利を勝ち取りたい」

◆故郷占領された怒りをドローンに託し
彼は現場でのドローン運用の手順を説明してくれた。攻撃では、適当に空を飛び回って、敵を見つけたら突っ込むようなことはしない。
偵察ドローンや地上部隊からの情報を総合して、攻撃目標の位置と対象の形状を確認する。標的は戦車、装甲車、塹壕の兵士などさまざまだが、戦車であればその装甲の強度に応じて、どの弾薬を搭載するかが決められる。選定した標的を上空から確認したら、敵兵に猶予を与えることなく一気に突っ込む。
<ウクライナ東部>「住民を必ず救う」ミサイル攻撃下で救助続けるポクロウシク警察医療隊(1)写真13枚


雨や霧だと極端に視界が悪くなり、命中率は下がる。さらに夜間は、民生品を改造したドローンでは限界がある。ウクライナ軍側の暗視カメラは不足していて、ロシア軍はドローンの動きが鈍る夜に前進してくるという。
オペレーターのシャマンカさんと、林の中に入った。彼女はゴーグルを装着し、手元のコントローラーのスイッチを入れた。ウィーンとプロペラが回転し、機体がすっと浮上した。木々の上を高速で上下左右に飛びまわり、撮影しようとカメラを向けても追いつけない。
<ウクライナ東部>兵士の肖像(2・前編)武器弾薬不足とドローン攻撃で苦戦する砲兵部隊 写真11枚
