シャマンカさんは2014年に入隊し、ドンバス戦争にも参加。「今回の侵攻は、これまで経験した戦いのなかで最も過酷で厳しい」と話す。故郷のヘルソンは占領され、幼い娘は、自分の母に預けて、国外に避難させた。

「家も何もかも失った。その怒りをドローンに託して戦っている」

スマートフォンの写真には、彼女と幼い娘が笑顔で写っていた。

シャマンカさんの故郷ヘルソンはロシア軍が占領。「家も何もかも失った。その怒りをドローンに託し戦っている」(2024年4月・リマン・撮影:玉本英子)
シャマンカさんの幼い娘は、自分の母親に預け、国外に避難させた。「2014年から兵士をしている。この戦いはこれまで経験したなかで最も過酷で厳しい」と話す。(写真:シャマンカさん提供)

◆ロシアは国家レベルで量産化

武器・弾薬の量で圧倒する強力なロシア軍に対し、当初はウクライナ軍はドローン戦術で優勢だった。だが、ロシア軍もドローンを配備すると形勢は変わり始めた。遠隔誘導無線を妨害するジャミング装置も一部で導入され、対策が講じられていった。さらに小型誘導ミサイルのように強力な自爆攻撃型ドローン・ランセットが投入されると、こんどはウクライナ軍がドローンに苦しめられるようになった。

軍の調達品だけでは機体は不足し、それを補うのは、民間企業や行政機関の職場、個人の有志などから寄付される民生品ドローンだ。他方、ロシア軍は国家レベルでランセットなど高度な軍用新型ドローンを開発し、プーチン大統領はさらなる増産を指示している。

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シャマンカさん(右)は、普段、大型の機体を操縦する。ペイロードが大きく、威力が高い爆薬を搭載、投下できる。(第21独立機械化旅団公表写真)
「もし我々が負ければ、ロシアとその支援国は自分たちが無限の力を持っていると振る舞うでしょう。すると別の地域でいずれウクライナと同じことが起きる」とダイバー班長(2024年4月・リマン・撮影:玉本英子)
各部隊に導入が進むドローン対策銃。リトアニア製EDM4スカイワイパーは電磁パルスで妨害電波を発して、ドローンを無力化させる。他方、ロシア軍側も同様の兵器を装備(第21独立機械化旅団公表写真)

◆ロシア兵は最期に顔ゆがめ

ダイバー班長がパソコンで実際の戦闘を記録した映像を見せてくれた。上空から目標の戦車や装甲車を捉え、高速で向かっていくドローン。映像が途切れた瞬間が、爆発したことを示す。ロシア兵に向けて襲いかかるシーンがあった。近づいてくる機体を見つけた兵士は、必死に走って逃げようとする。映像の最後、振り向いた時の彼の顔は恐怖で歪み、何かを叫ぼうとしているようだった。

私の目の前にあるドローンは、紛れもなく人を殺す兵器なのだ。今日も双方のドローンが戦場を飛び交い、互いに兵士の命を奪い続けている。

 「ウクライナ侵略を考える~『大国』の視線を超えて」著者、加藤直樹氏に聞く(4)共有できる地平とは

https://www.asiapress.org/apn/2024/06/japan/sinryaku-4/
ドネツク州リマンは、2022年4月にロシア軍に制圧され、のちにウクライナ軍が奪還。今も近郊では激しい攻防が続く。(地図作成:アジアプレス)

 

(※取材時から少し時間が経過しての掲載ですが、部隊配置などの情報を考慮して時間差が出ています。また任務中の兵士のフルネームが出せない場合があります。ご了承ください)

 

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