シャマンカさんは2014年に入隊し、ドンバス戦争にも参加。「今回の侵攻は、これまで経験した戦いのなかで最も過酷で厳しい」と話す。故郷のヘルソンは占領され、幼い娘は、自分の母に預けて、国外に避難させた。
「家も何もかも失った。その怒りをドローンに託して戦っている」
スマートフォンの写真には、彼女と幼い娘が笑顔で写っていた。


◆ロシアは国家レベルで量産化
武器・弾薬の量で圧倒する強力なロシア軍に対し、当初はウクライナ軍はドローン戦術で優勢だった。だが、ロシア軍もドローンを配備すると形勢は変わり始めた。遠隔誘導無線を妨害するジャミング装置も一部で導入され、対策が講じられていった。さらに小型誘導ミサイルのように強力な自爆攻撃型ドローン・ランセットが投入されると、こんどはウクライナ軍がドローンに苦しめられるようになった。
軍の調達品だけでは機体は不足し、それを補うのは、民間企業や行政機関の職場、個人の有志などから寄付される民生品ドローンだ。他方、ロシア軍は国家レベルでランセットなど高度な軍用新型ドローンを開発し、プーチン大統領はさらなる増産を指示している。
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◆ロシア兵は最期に顔ゆがめ
ダイバー班長がパソコンで実際の戦闘を記録した映像を見せてくれた。上空から目標の戦車や装甲車を捉え、高速で向かっていくドローン。映像が途切れた瞬間が、爆発したことを示す。ロシア兵に向けて襲いかかるシーンがあった。近づいてくる機体を見つけた兵士は、必死に走って逃げようとする。映像の最後、振り向いた時の彼の顔は恐怖で歪み、何かを叫ぼうとしているようだった。
私の目の前にあるドローンは、紛れもなく人を殺す兵器なのだ。今日も双方のドローンが戦場を飛び交い、互いに兵士の命を奪い続けている。
「ウクライナ侵略を考える~『大国』の視線を超えて」著者、加藤直樹氏に聞く(4)共有できる地平とは


(※取材時から少し時間が経過しての掲載ですが、部隊配置などの情報を考慮して時間差が出ています。また任務中の兵士のフルネームが出せない場合があります。ご了承ください)
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