◆「家族の大切さがわかるようになった」
以前、イホール曹長は、電気溶接工として働いていた。
「ロシア軍の侵攻が始まったときは、まさかと思ったし、恐怖しました。でも2日後には心を決め、志願しました。妻とは言い争いになりました。でもそれが自分の義務だからと説得したんです。大変でしたけどね」


いま、自身のなかで何か変わったことはありますか、と聞くと、彼は、スマホを取り出し、幼い娘と妻と並ぶ写真を見せてくれた。
「これまで普通の市民生活を送っていました。戦争が始まり、この任務につくようになってから、妻、娘と息子をとても愛しているということに、あらためて気づいたんです。家族の大切さが、心からわかるようになりました」

任務には困難もともなう。住宅地では住民被害を避けるため、やたらと発砲できない。命中しても、コントロールを失ったシャヘドが住宅地に落下して爆発する危険もある。ウクライナ軍の報道官と話したとき、「シャヘドを海上で探知して妨害電波を出して無力化させ、落下させる防空バリアのようなシステムがあれば」と話していた。
だが、広範囲にこうしたシステムを構築するのは容易ではない。防空網を突破されたら、車両で追いかけて機銃で迎撃する。そんな「アナログ」な手法に頼らざるをえないなかで、兵士たちはシャヘドと向き合っていた。
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ロシア軍に数ではおよばないが、ウクライナ側もロシア領内で自爆ドローンによる攻撃を加えている。軍事施設だけではなく、住宅地でも被害が出て、市民が犠牲となっている。この戦争のもうひとつの現実でもある。



(※取材時から少し時間が経過しての掲載ですが、部隊配置などの情報を考慮して時間差が出ています。また任務中の兵士のフルネームが出せない場合があります。ご了承ください)
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