◆「家族の大切さがわかるようになった」

以前、イホール曹長は、電気溶接工として働いていた。

「ロシア軍の侵攻が始まったときは、まさかと思ったし、恐怖しました。でも2日後には心を決め、志願しました。妻とは言い争いになりました。でもそれが自分の義務だからと説得したんです。大変でしたけどね」

ウクライナ軍は、侵入機の迎撃状況を公表。1日だけでこの量だ。この日は巡航ミサイルのほか、シャヘド136/131を55機破壊としている。一方、破壊できなかったものもある。(ウクライナ軍公表画像)
旧ソ連製の対空機関砲ZU。「ゼー・ウー」と呼ばれる。威力はあるが、重機関銃DShkを載せた小型車両のほうが、シャヘドを追跡するには小回りがきくという。(第122独立領土防衛旅団公表写真)

いま、自身のなかで何か変わったことはありますか、と聞くと、彼は、スマホを取り出し、幼い娘と妻と並ぶ写真を見せてくれた。

「これまで普通の市民生活を送っていました。戦争が始まり、この任務につくようになってから、妻、娘と息子をとても愛しているということに、あらためて気づいたんです。家族の大切さが、心からわかるようになりました」

防空部隊が装備する携帯式防空ミサイル。(第122独立領土防衛旅団公表写真)

任務には困難もともなう。住宅地では住民被害を避けるため、やたらと発砲できない。命中しても、コントロールを失ったシャヘドが住宅地に落下して爆発する危険もある。ウクライナ軍の報道官と話したとき、「シャヘドを海上で探知して妨害電波を出して無力化させ、落下させる防空バリアのようなシステムがあれば」と話していた。

だが、広範囲にこうしたシステムを構築するのは容易ではない。防空網を突破されたら、車両で追いかけて機銃で迎撃する。そんな「アナログ」な手法に頼らざるをえないなかで、兵士たちはシャヘドと向き合っていた。

<ウクライナ東部>「住民を必ず救う」ミサイル攻撃下で救助続けるポクロウシク警察医療隊(1)写真13枚

https://www.asiapress.org/apn/2025/01/ukraine/iryotai-2/
マキシム機関銃が開発されたのは19世紀末。ロシアでは革命以前に導入され、ソ連軍も運用。「19世紀の銃を21世紀に使うとは」と兵士は苦笑した。水冷式なので水を注入。(第122独立領土防衛旅団公表写真)

ロシア軍に数ではおよばないが、ウクライナ側もロシア領内で自爆ドローンによる攻撃を加えている。軍事施設だけではなく、住宅地でも被害が出て、市民が犠牲となっている。この戦争のもうひとつの現実でもある。

領土防衛隊は本来は各州ごとに置かれた州防衛の部隊。侵攻後は、ウクライナ軍指揮下の部隊として、州を越えて最前線の戦闘地帯にも送られるようになった。(2024年4月・撮影:玉本英子)
訓練を指揮するティチネンコ中尉は言う。「たくさんの仲間と出会った。そして、たくさんの仲間を失った」(2024年4月・撮影:玉本英子)
オデーサに飛来するシャヘドは、黒海を挟んだクリミア半島からが多いという。(地図作成:アジアプレス)

 

(※取材時から少し時間が経過しての掲載ですが、部隊配置などの情報を考慮して時間差が出ています。また任務中の兵士のフルネームが出せない場合があります。ご了承ください)
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