◆削り跡多数でも「飛散性は低い」

平岡小学校(同市西区堀上緑町)でも同様だ。5月16日、3階から5階の階段室天井に施工された吹き付けパーライトから白石綿を基準超の0.3%検出した。
含有率はそれほど高くないものの、現場写真を見ると、おそらく柄の長いほうきで児童らが天井を削って遊んでいたことを示すとみられる、天井の吹き付け材を棒か何かで削り取った跡がいたるところに見られ、損傷がひどいようすだった。だが同じく劣化・損傷状況についての調査結果は開示がなかった。こちらも安全確認のための調査が十分されていないということになる。
ところが保護者らに送った文書では、そうした説明は一切なく、逆に「合成樹脂やセメントなどの結合材によって固定されているため、飛散性は低い」と健全な状態についての一般論が示されていた。現実のリスク要因を無視した説明といわざるを得ない。
また鳳南小学校と同様に、誰も居ない静穏状態での空気環境測定で石綿不検出と報告している。
今回情報公開で得られた市の内部資料から2つの小学校における市の対応を見直して改めて感じるのは、市が当時報道発表しなくなったことの不自然さである。
今回の2小学校を含む9施設について、報道発表しなくなった理由を3月に質した際、市は「ふつうに吹き付け石綿は使われているものですので、あるというだけで報道発表はしていない。法違反があるとか、大きな影響があるとかを勘案して決めている」(環境共生課)と説明した。
しかし当時の記事でも指摘したことだが、吹き付け石綿が露出し児童らがばく露した可能性があるにもかかわらず、報道発表しなかった合理的理由が見当たらない。
情報公開で得られた資料をふまえて市環境共生課に確認してわかったことだが、公表対応をめぐっては、同課と建築部局で石綿の露出や飛散などの状況をふまえてフローチャートで判断基準を示そうとしたが、結局合意が得られなかった。その後、2021年12月に市の推進本部会議で、判断基準がなく、実質的に担当課が自由に報道発表やHP掲載、非公表を決めることができる「公表対応の考え方について(案)」が示されて合意された。その結果、報道発表しなくてよい仕組み(報道発表とHP掲載の場合は環境共生課が関与)が導入されたのだという。
改めて市教委学校施設課に聞くと、「当時はとにかく早く保護者や学校関係者に通知することと、早くホームページ(HP)に掲載することに必死だった。(報道発表ではなく)HPに公表するとの流れがあった」という。
情報公開を経てもよくわからなかったこともある。その1つが、担当課と環境共生課の協議内容である。
市によれば、報道発表するかどうかは担当課と環境共生課で協議して決めたというのだが、協議内容については「当該文書が作成されていない」として非公開だった。
市教委学校施設課と環境共生課は「協議したはずだが、口頭でされたので記録がない」と口をそろえた。