愛知県一宮市内にある産業廃棄物の積み替え保管施設(同市千秋町浅野羽根字西南出)でアスベスト(石綿)を含む成形板などが過剰保管され、野ざらしのまま放置されている問題をめぐり、市は行政代執行による飛散防止措置の実施を決め、7月中に施工の予定だ。ところが市の計画を聞いて驚いた。なにしろ法令すれすれで解体作業時であれば違法と判断されても仕方のない代物だったからだ。(井部正之)

産廃業者サーラインが野積み放置したアスベストを含む成形板などの山の1つ(一宮市提供)

◆飛散防止は散水のみ

石綿を含む建材を施設で不適正保管していたのは、産廃業者のサーライン(名古屋市港区)。同社は石綿を含む成形板などを施設内で重機破砕させていたが、その際に労働者に防じんマスクの使用をさせなかったなどとして1月に愛知労働局により書類送検されている(不起訴処分)。

その後同社は石綿を含む成形板などの産廃約1400立方メートルを場内に過剰保管し放置。市は同社と同社社長に対し、シート養生して石綿飛散を防止することを求め措置命令したが、1カ月の期限を過ぎても対応しなかったとして6月2日、両者を廃棄物処理法(廃掃法)違反の疑いで刑事告発した。

市は同社が履行しなかった飛散防止措置について7月中に行政代執行で実施するとして、市議会に99万円の費用を含む補正予算案を提出。市によれば、6月19日の経済教育委員会で審議済みで、とくに反対意見もなかったことから26日の本会議採決で正式に予算措置が決定される見通し。

市の計画は、石綿ばく露防止の防じんマスクや防護服を着用した作業員が散水しつつ、厚さ0.2ミリのポリエチレンシートで建材の山を覆って、金属製のくいで地面に固定するというもの。

ところが市廃棄物対策課によれば、湿潤は散水のみで、粘着性のある薬液で石綿の飛散を抑制する「飛散抑制剤」は使用しない。また作業時に周辺の石綿飛散が起きていないかを確認する空気環境測定も実施しないという。これはいかがなものか。

そもそも現場には破砕された建材が大量に野積みされ、現状でも石綿飛散のおそれがあるとして市は措置命令を出した。であれば、作業時の飛散防止は万全でなくてはならないはずだ。

たしかに大気汚染防止法(大防法)や労働安全衛生法(安衛法)石綿障害予防規則(石綿則)では作業時の湿潤化に使うのは水でもよいことになっている。だが大防法では法令上は「薬液等」とされ、施行通知やマニュアルで水も含むことが記載されているものの、一義的には飛散抑制剤の使用が想定されている。

また環境・厚生労働両省で作成する「建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル(2024年2月改正)」では湿潤化の説明に、〈水や界面活性剤(クロシドライトやアモサイトなどは疎水性であり、水をはじく傾向があるため、界面活性剤を用いる)で作業中の空中散布を行うことも考えられる〉(p156)とされ、現場にクロシドライト(青石綿)やアモサイト(茶石綿)を含む建材が残置されていることも想定される以上、単に水を使うだけでは十分な飛散防止が期待できない可能性がある。

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