
金正日-金正恩政権の頭を悩ませてきた政権内の資料流出問題。私たちアジアプレスを含め少なくない外国メディアが、20数年前から様々な内部資料を公開してきたが、北朝鮮当局なりに様々な対策を講じてきた。その一端が分かる文書を入手した。労働党の宣伝扇動部が作成した秘密流出防止を指示するもので、金政権は、資料の電子化進めていることが分かった。入手した内部文書と、最新の内部調査を基づき、2回にわたって報告する。(チョン・ソンジュン/カン・ジウォン)
◆「秘密流出防止」を指示した文書が流出という皮肉
「秘密管理をしっかりせよ」という金正恩氏の発言まで引用した文書が流出するとは、なんとも皮肉なことである。
アジアプレスでは、「学習提綱の配布と保管、取り扱いおよび回収処理に関する布置案」というタイトルの文書を、ある脱北者を通じて入手した。5年前に作成されたもので、文書管理に関する内部規定が記された2ページ。作成したのは労働党の宣伝扇動部だ。
文書には、シリアル番号とともに「2020年3月28日発送、4月28日回収」という日付が付いていた。詳細を一つずつ見てみよう。

◆講演資料の回収と台帳で整理することを厳格に指示
文書では、各級党組織に対し、講演資料の配布と回収処理台帳を正確に整理するよう指示し「事業を適切に行わないと、敵に渡りわが国の制度を誹謗中傷するために利用される」と警告している。
これまで、一般住民を対象とした「学習提綱」はもちろん、党や軍の主要幹部だけが閲覧できる秘密文書まで、様々な資料が世界に暴露されてきた。北朝鮮当局は文書にシリアル番号を付けたり、使用した資料を速やかに回収したりするなど、流出防止に頭を悩ませてきた。
2010年頃までは、資料の現物が中国に持ち出されることが多かったが、北朝鮮当局が管理を厳しくすると、北朝鮮国内で撮影された資料データが流出するケースが主流になった。
撮影する暇を作らせないためだろう、今回入手した文書には、「学習提綱は、講義が終わった時点で漏れなく回収し、10日以内に手順とおりに処理しなければならない」と、厳格になった文書管理規定が明記されている。