アジアプレスでは6月30日(月)、東京にて北朝鮮の最新情勢セミナーを開催します。北朝鮮内部の取材協力者による現地調査を基にした報告です。多くの方のご参加をお待ちしています。
◆ 概要

90年代以降、北朝鮮の物流の中心となり、住民たちの生計を支えてきた市場<ジャンマダン>が今、大きく衰退し、その機能もがらりと変質している。金正恩政権は個人の自由な経済活動を徹底して規制し、同時に貿易や物流の国家独占を強引に進めた。現金収入を減らした住民は、国家への従属を強いられ苦境に喘ぐ。金政権は、一方で企業と農場の裁量を拡大して規制緩和に動き増産に注力している。アジアプレスでは、縮む市場経済と拡大する国営流通の実態に迫るため、両江道と咸鏡道を中心に北朝鮮国内と、朝中国境現地で調査を実施。見えてきたのは、金正恩体制の統制力の回復と、恐怖と抑圧に慄く住民たちの現実であった。
報告者 石丸次郎/アジアプレス
◆ 内容
1. 市場経済の衰退
➣過去の市場は、穀物、生活必需品、中国産製品の自由取引空間だったが、今では販売規模と品目、商取引の自由度が大幅に縮小された。
➣ 「市場は農地産物の売り場に転落した」「ジャンマダンは死にかけている」という住民たちの証言は、市場機能の根本的な変化を示している。
2. 国家流通と貿易の独占化
➣ 貿易、物流、流通は国家が徹底的に独占し、民間の自律取引を禁止した。
➣ ほぼ全ての分野で個人経済活動を強く制限し、国家管理に踏み切った。
➣ これにより、住民の現金収入が大幅に減少し、国営商店への依存度が高くなった。生計を国家に従属させる構造へ転換させている。
3. 両面的な経済政策:統制と自律の平行
➣ 市場は抑圧しながらも、企業と農場には一部自律権を与えて規制緩和を実施し、新しい増産政策を導入した。
4. 住民の現実:恐怖の中の順応
➣ 強化される国家の統制力の裏には、監視、処罰、不安、抑圧に萎縮した住民たちの暮らしが存在する。
➣ 外部の情報統制と恐怖政治は、住民の批判的な見方を封鎖する道具として作用している。
北朝鮮経済は単なる低迷ではなく、体制維持戦略下の再編成の局面にある。市場経済の衰退は金正恩体制が意図した結果であり、国家の統制は「理念的統制」から「生計統制」にまで拡張されている。“カローリ統治”が現実的に執行中であるのだ。
本セミナーでは、現地調査を通じて明らかになった構造的変化の実態と含意、そして、北朝鮮住民の生存方式の変化まで幅広く明らかにする。
◆コメンテーター

平井久志(ひらい・ひさし)氏
ジャーナリスト、共同通信客員論説委員。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。
著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)、最新刊『金正恩の革命思想』(筑摩選書)など。
◆開催概要
・6月30日(月) 18:30~20:30
・場所:KDX東新宿ビル 先着80名(新宿区歌舞伎町2-4-10、東新宿駅徒歩1分)
https://maps.app.goo.gl/6FN3g6jDrRY7qqd56
・先着80名 入場無料 会場カンパ1000円
・当日はZoomにてオンライン配信も予定しています。詳細は後日。
・主催 アジアプレス お問い合わせは 06-6373-2444 / osaka★asiapress.org(★を@に変更して送信してください)まで