ダイナモ道場を運営するヴィクトル・コマリョフ師範は話す。
「柔道は私たちにとって、スポーツを超え、生きる指針です。意志力を鍛え、礼節を学ぶなかで、心のありようや自身と向き合う姿勢を教えてくれます。人生哲学そのものです」
ウクライナで広く親しまれてきた柔道。だがロシア軍の侵攻にさらされた地域では、閉鎖を余儀なくされた道場も少なくない。
プーチン大統領は「柔道家」として知られる。そのことをどうお思いでしょうか、と私はコマリョフ師範に聞いた。すると彼は顔を曇らせた。
「私たちの国土が力づくで奪われ、ミサイルで市民、子どもが毎日のように殺されています。残念ながら、彼は柔道の精神や哲学とは程遠い人間と言わざるをえません」
<ウクライナ>「戦争は人間の悲しみそのもの」集合住宅を襲った巡航ミサイル(ウマニ) 写真11枚


道場には、地元の練習生に交じって、戦闘地域から逃れてきた子どもたち、40人が通う。
師範は言う。
「戦争は子どもに深刻な影響を与えました。心を閉ざしている子も少なくありません。柔道が心の平静を取り戻させてくれています」

◆破壊の町、オリヒウから逃れ
この道場に通う避難民の子どもの半数以上が、オリヒウの出身だ。
ロシア軍はオリヒウの7キロに迫り、ウクライナ軍が攻防を続ける。激しい砲撃と爆撃で、かつて1万3千人いた住民のほとんどが脱出した。
<ウクライナ東部>兵士の肖像(4) ドローンが変える戦場、ロシア兵は最期 顔ゆがめ(写真17枚)


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