3 アスベスト疾病に関する労災審査請求時の鑑定について

石綿関連肺がんかどうかの判定は、アスベストばく露と医学的所見が必要です。労働基準監督署が労災を不支給とした場合、被災労働者や遺族は審査請求できます。
審査請求段階の鑑定について衆院総務委員会で「鑑定医が同じなら同じ結論になってしまう。これでは、審査請求の意味がない。・・・丁寧な不服審査が必要ではないかと思いますが、いかがでありましょう。」との質問に対し(2014年5月15日、近藤昭一議員)、「(労働者災害補償保険)審査官が、監督署が意見を依頼した医師・・・とは異なる専門医からの意見を求めることも含めまして、審査請求事件の公正かつ適正な処理をするために、丁寧な対応に努めてまいりたいと考えております」と厚生労働省が答弁しています。
アスベスト疾病の労災審査請求のあり方について、どのように考えられますか。

【自由民主党】
1に同じ。

【公明党】
ご指摘の厚労省答弁にもありますが、審査請求時の鑑定について、審査官が必要であると判断した場合は、新たに医学的意見を収集する等により、必要な調査を行うものと承知しています。労災保険の給付対象と認められるかどうかについて総合的に判断し、公正かつ丁寧な対応が必要であると考えています。

【立憲民主党】
労災保険制度は、被災労働者の社会復帰の促進等を図り、労働者の福祉の増進に寄与することを目的とする制度であり、当初の鑑定医と異なる鑑定医の意見を求めるといった対応を行い、丁寧かつ公正な審査となるようにすべきです。

【国民民主党】
1に同じ。

【日本維新の会】
1に同じ。

【日本共産党】
丁寧な不服審査が必要です。審査請求の際に異なる専門医からの意見を求めるなど、公正かつ適正な審査がなされるようにすべきです。あわせて、厳しすぎる労災認定の在り方そのものについても見直す必要があると考えています。

【れいわ新選組】
労災保険審査請求制度の趣旨は、国民の権利利益の救済を図るとともに、労働基準監督署の適正な運営を確保することです。労災保険審査請求において、労災不支給の原処分で監督署が意見を依頼した鑑定医に、審査請求でも再び鑑定を依頼することは、原処分の鑑定結果と同じになる可能性が高いため、国民の権利利益の救済を図ることにつながりません。アスベスト疾病に関する労災審査請求時の鑑定は、原処分の鑑定医と別人の鑑定医によって実施されるべきあり、鑑定医を公開するなどして審査の透明性を高めるべきです。なお、労災補償を支給しないとした久留米基準監督署の決定を、別の医師の意見を採用した厚労省の労働保険審査会が2008年7月14日に取り消し、業務と死因との関連を認めた事案では、再審査請求時の鑑定が原処分の鑑定医と別人の鑑定医によって実施されており、評価できます。

【社民党】
審査請求において「監督署が依頼した鑑定医と同じ医師による判断がそのまま反映され、審査請求が形骸化する」問題について、社民党は制度的不備と指摘してきました。アスベスト疾病の労災審査において、「同じ鑑定医による一元的判断」を避け、複数専門家の鑑定導入と審査の多面的検証を義務化する方向で制度改革を推進すべきと考えています。
「正当な理由なく不認定となる救済制度の構造問題に正面から向き合う姿勢」を今後も堅持し、アスベスト疾病の労災審査請求時における鑑定の公正・多元的な運用を求めていきます。

4 元国鉄労働者の特別遺族給付金(労災時効救済)について

石綿救済法(厚生労働省関係)の労災時効救済制度について、厚生労働省は死亡診断書に中皮腫などアスベスト疾病が記載されており、石綿ばく露が認められれば、特別遺族給付金を支給します。
ところが、鉄道建設・運輸施設整備支援機構が石綿救済法や労災認定基準に拘束されないとしているため、JR元職員の遺族は救済されますが、旧国鉄元職員は、死亡診断書に中皮腫と記載されていても遺族が救済されないという問題が生じています。参院の質問主意書に「旧国鉄元職員の遺族及びJR元職員の遺族間の権衡けんこうを失することは、許されない」との指摘があります(2025年2月28日質問第48号、4月11日質問第95号、福島瑞穂議員)。
上記の問題について、どのように考えられますか。

【自由民主党】
1に同じ。

【公明党】
日本国有鉄道の元職員に係る労働災害の認定等については、「石綿による健康被害の救済に関する法律」は適用されず、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構が定めた基準に基づき、対応が図られているものと認識しております。引き続き、関係者のみなさまに寄り添いながら、必要に応じた対応に努めてまいります。

【立憲民主党】
アスベスト被害者の属性により救済内容に格差が生じない隙間のない救済を実現するため、縦割り行政を排し、対策を総合的に推進すべきです。

【国民民主党】
1に同じ。

【日本維新の会】
1に同じ。

【日本共産党】
死亡診断書に中皮腫と記載されていても遺族が救済されないのはあまりにも理不尽です。厚労省の認定基準に沿って死亡診断書の記載を尊重すべきです。鉄道・運輸機構は、厚労省の認定基準を運用していると言いながら、実際は「死亡診断書」条項を無視した運用をしており、政府や国会で唱えられたアスベスト被害の「すき間ない救済」に反します。

【れいわ新選組】
御指摘の事案については、申請者からの異議の申立てを受けて、鉄道建設・運輸施設整備支援機構において再審査を行った結果、2024年11月に業務災害として認定されたものと承知しています。
そもそも石綿による疾患については、潜伏期間が長く、石綿と疾患の関連性に気づきにくいなどの他の疾患とは異なる特徴があるため、申請をしないうちに被害者が死亡した後5年が経過し労災遺族補償の時効期間が過ぎても、遺族に対し特別給付金等の支給を認めているという特段の事情があります。そして、その際カルテが5年で廃棄され、医学資料が整わないなどの事情を合理的に考慮する必要があります。石綿被害は、救済法の趣旨にのっとり「すき間ない救済」をすべきであり、旧国鉄元職員の遺族及びJR元職員の遺族間の権衡を失することは、許されないと考えます。

【社民党】
旧国鉄職員などから、「他の職域・被害者との不公平」や「制度適用における釣り合いを図ってほしい」とのこうした声を受けとめ、社民党ならびに党首福島みずほ参議院議員は旧国鉄職員にも同等の救済水準保障をするよう訴えてきました。
「労災時効救済が必要なのは工場労働者だけでなく、旧国鉄職員にも適用すべき」ということも主張してきました。旧国鉄職員遺族にも同制度が適用されることを強く支持し、これからも引き続き求めていきます。

 

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