7月20日投開票の参院選を目前に控えるなか、まったく話題にも上らないアスベスト(石綿)被害救済のあり方について、主要政党の考え方はどうなっているのか。被害者団体が7月16日までに公表した公開質問書への回答から紹介する。(井部正之)

アスベスト患者と家族の会連絡会が実施した公開質問への主要各党の回答が掲載されたページの一部

◆救済制度の改善に各党は?

被害者団体「アスベスト患者と家族の会連絡会」は6月30日付けで、自由民主党・公明党・立憲民主党・国民民主党・日本維新の会・日本共産党・れいわ新選組・社民党の8政党に対し、公開質問書を送付。7月16日までに回答を得た(同連絡会ウェブサイトでは同14日回答、15日公表と記載されているが、確認したところ16日に社民党の回答を追加)。

質問したのは、
1 救済給付の遺族年金創設や療養手当の改善について賛同するか
2 石綿健康被害救済推進協議会の創設や当事者の恒常的な参加について賛同するか
3 アスベスト疾病に関する労災審査請求時の鑑定について、異なる鑑定医からの意見を聞くなど公正かつ適正な処理をするために、丁寧な対応が必要ではないか
4 元国鉄労働者の特別遺族給付金(労災時効救済)について、鉄道建設・運輸施設整備支援機構が石綿救済法や労災認定基準に拘束されないと主張・対応していることをどのように考えるか
──の4項目である。

質問1の救済給付の遺族年金創設や療養手当の改善については、かねて当事者から必要性が指摘されてきたものだ。

2006年3月施行の石綿健康被害救済法で労災以外の石綿被害について救済制度で認定されれば、その石綿関連疾患に要する医療費の自己負担分に加えて、月額約10万円の療養手当が支払われようになった。しかし物価上昇などは考慮されておらず、約20年にわたって変更されていない。かねて子育て世代の若い世帯主が被害に遭った場合に生活が困窮するとの問題が指摘されてきた。また、労災保険のように遺族年金の制度もない。こうした状況から、かねて被害者団体は遺族年金の創設や療養手当の改善を求めてきた。同連絡会は今回改めてこれら2つについて賛同するか聞いた。

質問2の石綿健康被害救済推進協議会の創設や当事者の参加は同連絡会が設置の必要性を訴えているものだ。ちなみに上記2点は2024年の衆院選の際にも尋ねている。

政権与党の自民党と公明党は総じて現状維持といってよい回答で、野党はそれぞれ内容に違いはあるものの、改善に同意ないし取り組む方針を示した。

前回未回答だった自民党は、救済給付の改善など質問1について、「『総合政策集2025J-ファイル』において、記載しておりますのでご確認いただけましたら幸いです」と回答。

同政策集には「公害健康被害対策等の着実な実施」として、「水俣病問題の解決やアスベスト被害者の救済、アスベストの飛散防止など、公害等による健康被害への対策を着実に進めます。併せて、国内における毒ガス弾などの老朽化化学兵器に関する環境調査や安全確保に向けた取組みも継続して推進します」と記載。「アスベスト被害者の救済」は「対策を着実に進めます」とあるのみで、質問に答える内容となっていない。

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