小学校で危険性の高い吹き付けアスベスト(石綿)が見落とされていた大阪・堺市で7月24日、9月から開始する除去工事の説明会が開催されたが、有害性について説明が一切ないなど、不備が目立つ内容だった。(井部正之)

◆見えない石綿監視の難しさ
説明会があったのは登美丘西小学校(同市東区大美野)。2021年7月に体育館上部にある3階の天井裏にこれまで見落とされていた石綿含有吹き付けロックウールの使用が新たに明らかになった4校の1校だ。
もともと保護者の1人が説明会の開催を求めたが、市は「個別に説明するので必要ない」と拒否。6月に仮設工事が始まった。
改めて保護者が被害者団体「アスベスト患者と家族の会連絡会」とともに市と交渉。同じく見落とされていた吹き付け石綿が見つかった別の小学校で説明会が開催されていたことを指摘するなどして、ようやく市が実施に同意した経緯がある。
ところが24日の説明会で市は石綿の危険性を一切言及せず、対策工事の内容だけ説明した。
市が示した資料には、あたかも説明会後から作業が始まるよう“偽装”されているが、実際には、すでに述べたように6月に着工。石綿除去は9月から11月までの予定という。
専門的知見を有する第三者として工事監視を担う、適正な石綿対策工事の実現に向けて人材育成などに取り組む日本石綿対策技術協会(ACA Japan)からは技術的困難さも含めたわかりやすい解説があった。
目に見えず臭いもなく、放射線などのように機械で自動計測もできない石綿は、空気中への飛散を知るためには、ポンプで空気を引き込んでフィルターに吸着させ、それを顕微鏡分析するしかない。こうした石綿検出の技術的な難しさもふまえて、通常の空気測定に加えて、石綿以外も含むが、ほぼリアルタイムに計測可能なデジタル粉じん計を使った迅速測定・管理による飛散防止の取り組みが説明された。
また石綿含有吹き付けロックウールの除去作業時には、現場を隔離し作業場内を減圧して、外部に石綿を含む空気が漏れないようにするだけでなく、実際にそれが適切に機能しているかを場内に無害な煙を充満させて、漏れがないかを調べる手法なども採用するという。
日本の法規制では、第三者による監視は定められておらず、ほかの自治体や民間の除去工事では、第三者監視など皆無といってよい状況にある。そうしたなか、堺市では吹き付け石綿などの除去では同協会による第三者監視を位置づけ、成果を上げている。過去の不適正事案の積み重ねが原因ではあるものの、全国を見渡してもほとんどない先進的な取り組みであることに変わりはない。