この車両はどういう経緯で部隊に配置され、どのように運用していますか?
カイザー車長:

いつウクライナに入ったかはわかりませんが、うちの旅団では昨年8月に中部の町で車両を受け取りました。私の所属する迫撃砲隊は、この車両で120mm迫撃砲と砲弾、食料を3つの地点に毎日、戦闘位置まで運搬します。乗員4人です。

この車体の銘板には防衛省でなく「防衛庁 2002年4月製」とあった。防衛庁が防衛省となったのは2007年。「警務用」とあるので警務隊車だったとみられる。(2025年4月・撮影:玉本英子)
以前は自衛隊・警務隊の車両のようで下地は白。カイザー車長によると旅団が受け取ったときはすでに車体はオリーブグリーンに塗ってあったとのこと。(2025年4月・ポクロウシク近郊・撮影:玉本英子)
オリーブグリーンは粗いスプレー吹きつけで、幌部分にも飛び散っていたので、警務隊車両が白いままウクライナに届き、のちに塗り替えたと思われる。(2025年4月・ポクロウシク近郊・撮影:玉本英子)

これと別に三菱L200という車が部隊にありますが、プレートキャリア、弾倉、ヘルメットを装着して、自動小銃を持ってフル装備で座席に乗り込むときの手間とスペースの狭さを考えてみてください。大変です。でもこの車両(1/2トントラック)はドアが大きく、車高にも余裕があるので、迅速に乗り降りできます。

(訳注:L200は、三菱の民生用ピックアップトラック・トライトンの欧州での名称)

三菱L200で運べる砲弾は15。1発の重さは16kgです。それに比べて、この車両だと砲弾を40発積めるんです。また、L200では、満載すると重くて泥地を進めません。でもこの車両はそんなことはないからありがたいし、荷下ろしも楽です。ただ、願わくば、もう少し後方部分(荷室)が長ければ、迫撃砲がうまく収まって、いろいろ積めるのですが…。

<ウクライナ東部>兵士の肖像(2・前編)武器弾薬不足とドローン攻撃で苦戦する砲兵部隊 写真11枚

荷室には120mm迫撃砲や砲弾を積む。重すぎると速度が出せず、自爆ドローンにも狙われやすいうえ、砲弾に誘爆すると被害は大きい。(2025年4月・ポクロウシク近郊・撮影:玉本英子)
砲弾16kgX40発を積むと計640kgになる。1/2tトラックの積載量は約440kgとされるので、複数の乗員を合わせるとかなりの超過となるようだ。(2025年4月・ポクロウシク近郊・撮影:玉本英子)

どんな地形を走りますか、また日本車の右ハンドルは不便ではないですか?
カイザー車長:

走行性、操作性もよく、泥地や荒れ地、畑、そして雪道も走ってくれます。右ハンドルという位置については、まったく問題ありません。エアコンなどの機器は、いろいろと操作してみて覚えました。ドア内側にあるホルダー(銃架)は、その形から、ここに小銃を固定するものだとわかりました。

ドア内側部分のライフルホルダー(銃架)。「その形から、ここに小銃を固定するものだとわかりました」と車長。(2025年4月・ポクロウシク近郊・撮影:玉本英子)
ナンバープレートが泥で隠れているが、ウクライナ軍所属の車両を示す黒いプレートが付けられていた。(2025年4月・ポクロウシク近郊・撮影:玉本英子)

たいてい車両には兵士たちが愛称をつけたりしますが、この車両をどう呼んでいますか?

カイザー車長:

私が使うこの車両のことは、「ミツィク」と呼んでいます。ミツビシを略したものです。

別の部隊にある車両については、どう呼ばれているかは知りません。

<ウクライナ東部>兵士の肖像(2・後編)「若い兵士の死はあまりに悲しい」 砲兵部隊 写真13枚

ウクライナは左ハンドルに対して、日本の自衛隊車は右ハンドル。この車両の愛称はミツビシを略して「ミツィク」。他の車両にはまた別の愛称がある。(2025年4月・ポクロウシク近郊・撮影:玉本英子)

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