◆交換部品なくネット検索、車輪の損耗激しく

メンテナンスはどうしていますか? この車両で部品交換が必要になったとき、スペアパーツはどう入手するのですか?

カイザー車長:

役に立ってくれている車両ですが、すでに破損した箇所もあります。そこが苦労するところです。破損部品はインターネットで検索して代替品をなんとか入手しました。タービンが壊れたときは、遠くの大きな町の修理業者まで運んで交換してもらいました。それでも適合しないパーツがあるので、頼んで探してもらっています。

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「戦闘現場ではドローンに狙われないよう高速で走る上に、瓦礫や鉄片、散布型地雷もある。茂みを進むこともある。車輪のダメージが著しい」と車長は話す。(2025年4月・ポクロウシク近郊・撮影:玉本英子)
ひび割れの出ているタイヤ。適合サイズの代替品の入手に苦労しているという。(2025年4月・ポクロウシク近郊・撮影:玉本英子)

いま、私たちがこの車両で直面している大きな問題は、車輪です。泥地、荒れ地、雪道での走行はタイヤの損耗が激しいのです。でもウクライナで類似する互換品がなかなか見つかりません。235ミリ幅のスワンプタイヤを買いましたが、位置が低く、ダメでした。

見てお分かりのように、このタイヤにはすでにひび割れが出ています。そして、これと同じタイヤを探すのにとても苦労しています。

ロシア軍との激しい攻防が続くポクロウシク(ポクロフスク)。第157独立機械化旅団は、ポクロウシクの東方に伸びる戦域に展開。(地図作成:アジアプレス)
2023年5月、防衛省でのウクライナへの自衛隊車両の引き渡し式典。(防衛省公表写真)

◆日本の支援のかたち

日本からの支援車両を日本の記者が取材に訪れれば「感謝しています」との答えだけが返ってくるとも予想したが、いろいろ聞くと現場で車両が直面する問題などにも話が及んだ。

これまで、日本からの復旧用重機、地雷処理器、医薬品など人道支援の現場も取材してきた。そうした意味では、ウクライナの「軍事」にかかわる分野への支援で、自衛隊車両が実際の戦争の戦闘現場で使われていることについては複雑な気持ちである。日本にとって、どのような支援があるべき形なのか、考えさせられる。引き続き、第2回では、ロシア軍のドローン攻撃に苦戦する状況など、自衛隊が直面したことのない戦場の現実についてもカイザー車長が語っている。

取材は、ロシア軍の自爆ドローンの飛来が少なくなる地点まで車両を一時移動しておこなった。それでも偵察ドローンの圏内で、長時間、同じ場所にとどまらないようにした。(2025年4月・撮影:アジアプレス)

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◆パート2に続く >>> (自爆ドローン攻撃に直面する自衛隊車両)

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【解説: ウクライナへの自衛隊車両提供】
2023年5月21日、岸田首相(当時)は、G7広島サミット出席のため来日したゼレンスキー大統領と会談した際、自衛隊車両や非常用糧食の提供について伝えた。同24日には防衛省で自衛隊車両(1/2トントラック、高機動車、資材運搬車)の引き渡し式典が行なわれた。提供車両は計101台で、ポーランド経由でウクライナに運ばれた。さらに2024年10月には、ウクライナ防衛相会談で追加車両約30台を提供することが伝えられた。

 

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