厚生労働省は7月11日、大手建材メーカー旭化成建材がアスベスト(石綿)を含まないとして過去に製造・販売していた外壁用の耐火接着剤に実際には石綿が含まれていたとして、建物の改修・解体時におけるばく露防止を徹底するよう業界団体に対し注意喚起した。なぜいまになって、石綿含有が明らかになったのか。(井部正之)

◆石綿含有「一切ない」はずが
発表によれば、新たに石綿含有が明らかになったのは、同社の次の2製品。
〇1971年~1996年に耐火認定を受けた外壁用耐火材「へーベルライト(耐火認定番号Wn1032)」に使用された耐火接着剤「へーベルボンド」(石綿含有3%)
〇1984年~1996年に耐火認定を受けた外壁用耐火材「へーベルライトデザインパネル(耐火認定番号Wn1110」に使用された耐火接着剤「ライトボンド」(石綿含有3%)
同社は「過去に取得したヘーベルライトの下記耐火認定に使用する副構成材料の耐火接着材(ヘーベルボンド、ライトボンド)に、石綿が含まれています」と発表。耐火接着材は、外壁耐火構造を構成する際に、ヘーベルライト同士の接着面に塗付するモルタル状のものという。
基準(重量の0.1%)超の石綿が含まれるため、この接着剤が使用された建物外壁の改修・解体時に、「関係法令に従って、適切な作業・処分をお願い申し上げます」と求めた。
同省も同日、業界団体に対し、これら2製品の石綿含有を公表。作業時のばく露防止などの徹底を注意喚起した。
しかし両者の発表からは重要な情報がいくつも抜け落ちており十分とは言い難い。
まず、なぜいまごろになって公表されたのかということだ。
発表資料には経緯説明がなかったため、7月18日に筆者が問い合わせたところ、同28日に同社住建事業部住建技術開発部から文書回答があった。同社によれば、2024年6月末に解体業者から問い合わせがあり、「石綿の混入証明書を要求された」(住建事業部)ことがきっかけという。
この要求がしっかりした内容だったようで、「先方から提示された耐火認定書(Wn1032)を確認したところ、副資材の耐火接着材に石綿含有の記載があることを認識しました」(同)と裏付け資料を突きつけられた結果だったことを明かす。
これを受けて社内調査を開始し、「ヘーベルライトに係る過去の耐火認定を調査しWn1110(引用者注:へーベルライトデザインパネルの耐火認定)にも同様の記載があることを確認し、これに関する社内資料調査、当時の関係者へのヒアリングを同時に実施しました」「結果として、弊社がヘーベルボンド、ライトボンドを製造していないことから、耐火認定書記載の内容以外に明確に石綿含有を確認できる記録が見つかりませんでしたが、HP(同注:ホームページ)に誤った記載があり、弊社が取得した耐火認定に石綿が含有されている旨が記載されている認定取得者として、この情報を開示した方がよいと判断し、中央労働基準監督署に相談、指示を仰ぎ、今回のHP公開に至りました」(同)との経緯だ。
これまで見落とされてきたのは、「2004年の法改正時に当時運用されていた認定に石綿含有品の記載がなく、過去の認定までさかのぼった確認を怠ったからであると考えています」(同)と認めた。