◆認定期間後も在庫処理で販売か

もう1つは、接着剤に石綿が使用されていた期間だ。

耐火接着剤「へーベルボンド」は1971年~1996年、「ライトボンド」には1984年~1996年にそれぞれ耐火認定を受けていたと発表されていたではないかと思われるかもしれない。しかしこれはあくまで耐火認定を受けていた期間であって、実際にこの製品が販売・施工されていた期間は明らかにされていない。

同社は「耐火認定が存続していた期間が1971年9月から1996年12月までですので、その期間の中で当該耐火認定を適用して建築確認が得られた耐火建築物に使用されています」(同)と回答。この期間であっても、必ずしも耐火認定対象の施工でない場合があり、すべてに使用したわけではないのだという。

一方で、「社内調査によって、弊社がライトボンドを販売していたこともわかりましたが、当時の販売に関する記録が残っておらず実績はわかりません」(同)とも答えていることから、耐火認定期間より後であっても在庫処理で販売が継続されていた可能性がある。

7月29日、改めて同社に認定期間以後に在庫処理として流通した可能性などを尋ねたが、同31日、「申し訳ありませんが、記録が残っておりませんので可能性への回答はできません」(同)とはっきりした見解が得られなかった。

記録が残っていない以上、流通していた可能性を認めるべきだ。こうした同社の姿勢は、建物などの改修・解体にたずさわる人びとへの石綿ばく露を誘発しかねず、誠実とはいえないだろう。

そもそも建物などの石綿調査や改修・解体にたずさわる人びとに対する注意喚起であれば、認定期間後の流通の可能性についてもわかりやすく説明するのが当然のはずだ。しかし同社の発表や同省の事務連絡に解説がないのは問題といわざるを得ない。両者とも反省のうえで改善すべきだ。また調査・除去・解体などにたずさわる方は注意してほしい。

「石綿含有3%」の根拠も聞いたが、あくまで耐火認定の記載で、同社は「弊社は製造しておらず、製造や成分に関する記録がないため詳細はわかりません」「耐火接着剤の現物を入手することができないため分析した結果はございません」(同)と石綿の種類や含有率が実際にどのくらいなのか確認できていないことを認めた。

同社は発表で「弊社が製造・販売する製品に石綿の含有は一切ない旨の記載をしておりました」(同)として、今回の件を踏まえ、「当該ウェブサイト上の記載は誤りでしたので、訂正すると共にお詫び申し上げます」(同)と謝罪した。

ところが同社のヘーベルライトなどの説明ページには今回明らかになった石綿使用について知らせる注記や発表資料のリンクはなく、「アスベスト(石綿)を一切含んでおりません」などと石綿使用がないことを誤認させる記載となっている。

このことを問い合わせたところ、「誤認を防ぐためのホームページの表記等について検討し、対応する予定です」(同)と回答した(8月5日午後12時現在も修正なし)。

ほかの製品は本当に大丈夫なのか。同社は「弊社が製造していた製品に石綿を意図的に含有したものがないことを確認しています」(同)との見解だ。

同社は、過去に当該耐火認定を適用した建物の解体・改修業務に従事したことのある方などからの問い合わせについて同社ウェブサイトの問い合わせフォーム(https://www.asahikasei-kenzai.com/contact/form.html)から連絡するよう求めている。

また厚生労働省が注意喚起したのは関連団体のみで、報道発表などはしていない。事業者・作業従事者・一般向けに石綿関連の「積極的な情報発信」のために年間2000万円以上かけて作成・維持している同省「石綿総合情報ポータルサイト」にも掲載されていない(ただし委託には他業務も含む)。これでは現場で石綿調査を担う労働者らに伝わらない可能性がある。

同省にも何度か連絡したが、担当者不在で回答が得られていない。

ほとんど講習機関数の増減しか更新のない(今年更新の75%)中身スカスカのポータルサイトにすら掲載しないあたりに同省の周知に向けた意気込みが透けて見えるというものだ。

 

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