大手建材メーカー旭化成建材がアスベスト(石綿)を含まないとして過去に製造・販売していた外壁用の軽量気泡コンクリート(ALC)板に使用する耐火接着剤2製品に、実際には基準(重量の0.1%)を超える石綿が含まれていたと7月に発表したが、8月4日、1996年以降も使用されていた可能性があることを認める技術資料を公表した。(井部正之)

◆当初販売・施工期間を明記せず
当初発表で、石綿を含有することが明らかにされたのは、
(1)1971年~1996年に1時間耐火の認定を受けていた厚さ5センチメートルの外壁用ALC板「へーベルライト(耐火認定番号Wn1032)」に使用する耐火接着剤「へーベルボンド」
(2)1984年~1996年に1時間耐火の認定を受けていた厚さ5センチメートルの外壁用ALC板「へーベルライトデザインパネル(耐火認定番号Wn1110」に使用する耐火接着剤「ライトボンド」
──の2つ。いずれもモルタル状の接着剤で、石綿含有3%とされる。
施工時は石綿使用が認められていたことから違法ではないものの、2005年7月の労働安全衛生法(安衛法)石綿障害予防規則(石綿則)の施行以降は、建築物などの改修・解体時にすべての建材などの石綿調査・対策が義務づけられている(当初は1%基準だが、2006年9月以降は0.1%基準)。建設当時も含め、購入者や施工者にとっては、事前に提供されている必要がある情報だ。
ただし当初発表では、上記2製品が販売・施工された期間を明記していなかった。石綿調査や改修・解体にたずさわる人びとに必要な情報が提供されておらず、不十分かつ不適切な記載だったといわざるを得ない。しかも認定期間以後に在庫処理として流通した可能性を尋ねた筆者の取材に対し、同社は7月31日、記録がないことを理由に回答を拒否した。
8月6日配信の拙稿で〈記録が残っていない以上、流通していた可能性を認めるべきだ。こうした同社の姿勢は、建物などの改修・解体にたずさわる人びとへの石綿ばく露を誘発しかねず、誠実とはいえないだろう〉〈そもそも建物などの石綿調査や改修・解体にたずさわる人びとに対する注意喚起であれば、認定期間後の流通の可能性についてもわかりやすく説明するのが当然のはずだ〉などと批判した。
同社による追加発表は記事の配信直前の8月4日のため、筆者の批判を受けてというより、おそらくはすでに問い合わせがあった結果だろうと推察している。
今回新たに「補足情報」として公表された技術資料には、この耐火接着剤の使用箇所について、「建て込まれたパネルの小口面に接着剤を塗布し、次のパネルを接着剤で接着するように建て込み、取り付け後同様に小口面に接着剤を塗布します」「使用箇所としてはパネル小口面となり、防水性を目的としてパネル表面目地部の溝に設けられるシーリング材(コーキング材)とは異なりますのでご注意ください」などと図で示しつつ解説。