◆警備員を縛ってトウモロコシを泥棒
恵山(ヘサン)市に住む協力者B氏は、収穫期よりずっと前の7月下旬から警戒が厳重になっていると伝えてきていた。
「7月21日に、高邑(コウプ)農場でまだ熟していない青いトウモロコシが強奪される事件があった。刃物を持った男3人が、畑の警備にあたっている人を縛り上げて盗んで逃げたのだ。
金もなく、食べるものに困った人による犯行のようだ。この事件を受けて、人民班で7月19~23日の間に地区から出ていた住民を調査した。私の住む地区も安全局が調査していた」
※人民班:末端の行政組織で通常20~30世帯、60~80人程の人員で構成される。
三池淵(サムジヨン)市でも、「まだ鳥の卵ほどの大きさでしかないジャガイモを盗んだ事件があった。それ以降、一切畑に人が接近できないようにしているそうだ」とB氏は説明する。
◆軍、警察、農場が総出で警備態勢
<北朝鮮内部>ほとんど農夫? 日常化した軍隊の農場派遣 タダ働き兵士を歓迎する農場 当局は兵士の不良行為を警戒
こうした事件を受けて、都市住民の農村への接近が厳しく統制されるようになったとB氏は述べる。
「7月25日から農村へのすべての出入りを統制するようになった。農村へ向かう道に軍の検問所が設置され、盗んだ農作物が持ち出されないか取り締まっている」
北朝鮮では2020年のコロナ・パンデミックの始まりとともに、商行為など個人の経済活動が厳しく制限されるようになった。都市住民の多くが現金収入を断たれて困窮が広がり、農村に行って物乞いや盗みを働く人が増加した。自警団まで組織して収穫物を守るという異様さは、金正恩政権の過剰な経済統制策に因るものである。
※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。

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