◆防護服透過し石綿ばく露か

除去作業に使われる防護服には、防水透湿のメルトブローン不織布を摩擦に強いスパンボンド不織布2枚でサンドイッチのように挟んだ「SMS素材」とスパンボンド不織布にポリエチレンの防水透湿通気フィルムを圧着した「SF素材」が代表的だ。いずれも素材の頭文字からSMS、SFと呼ばれる。
SMS素材が防じん性や防水性を持つのに対し、SF素材はそれらに加えて耐油性も持つ。一方、SMS素材のほうが通気性に優れる。
防護服に求められる機能および課題として大森部長は、
・しっかりと作業者を守る防御性能
・1日に4回以上も使い捨てるのでコストパフォーマンスが求められる
・密閉された空間での防護服作業は非常に暑く作業効率が落ちやすい
──の3つを挙げ、その結果薄くて涼しい、安価な防護服が選ばれやすいと説明。
ところが同社が委託実施した耐じん性テストで、「JIS T 8115適合品」のSMS防護服2製品で粉じんが透過していたと報告した。
石綿が防護服を透過すると衣類や身体に付着してしまい、自宅まで持ち帰るおそれがある。その場合、家族に石綿を吸わせることになりかねない。
同社が新たに開発したアスガードプロ(SMS素材)とアスガードプロプラス(SF素材)の防護服を紹介。同じくテストしたアスガードプロプラスでは粉じんの透過が見られなかったことも示した。いずれもJIS T 8115適合品(タイプ5・6)で、12月から発売予定という。
アスガードプロの価格は「ほかのSMS防護服と同程度」ながら、厚さがSMSで「最厚クラス」の61g/㎡で、「薄くて安い」から「厚くてリーズナブルそして安心」にしたいと大森部長は強調する。SF素材のアスガードプロプラスは、「タイベックの同等品で、半分ほどの価格でリーズナブルに売っていこうと考えています」と述べるとともに、JIS認証の取得に向けて製造企業が申請中とも明かした。
さらにHEPAフィルターを装着した電動ファンを2基搭載し、石綿などの有害物質の侵入を防ぎつつ外気を取り込むことのできるSF素材の熱中症対策防護服、アスガードプロクール(JIS認証申請中)も2026年2月の発売予定という。
最後に「顔認証、AIカメラを使った現場安全対策」として、TRIBAWLの山本雄一郎代表取締役が同社のAI顔認証ソリューション「kaopa」を活用した石綿除去現場などの入退場管理システムを紹介した。
石綿の除去現場出入口前に顔認証のタブレットPCを設置し、入退場時にAIカメラによる顔認証で本人確認することで、あらかじめ登録されていない別の者が入り込むことを防ぐもの。最速0.3秒で認証。入退場記録はCSVデータで出力可能。
入場者はスマホでQRコードを読み込んで簡単に登録可能。ネットワークを介さず端末単体で最大5万人までの入退室を管理可能という。
同社のAI顔認証ソリューション「kaopa」は端末単価10万円からで、月額費用1000円から。売り切りタイプも用意されている。
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