大阪・堺市で小学校の吹き付けアスベスト(石綿)を除去する工事の説明会における不適切発言について市議会でも追及され、市は「説明不足」と釈明し反省を示す一方、間違った説明はしていないと強弁した。しかし実際には事実関係すら未確認のまま答弁に臨んでいたことが明らかになった。(井部正之)

吹き付けアスベストの「見落とし」が20年近く放置されていた堺市立登美丘西小学校の体育館

◆説明会すら当初開催拒否

問題になっているのは市内の登美丘西小学校(同市東区大美野)の石綿除去をめぐる説明会。もともと2021年7月に市が市内4つの小学校で体育館3階の天井裏に使用されていた吹き付け石綿を発見(同9月末に公表)したうちの1校だ。その後、児童らの健康リスク評価を経て、ようやく石綿除去となった。

市は4校のうち日置荘小学校以外では説明会を開催しないまま石綿除去工事を実施していた。今回問題になった登美丘西小学校では、保護者が説明会の開催を求めたが、市教育委員会が拒否。被害者団体、アスベスト患者と家族の会連絡会とともに改めて保護者が要望し、ようやく7月下旬に開催が決まった経緯がある。

説明会で市教委は、石綿の有害性を一切説明しなかったうえ、土曜日や日曜日など児童不在時の作業を要望されたが拒否。あげく、「説明会の開催で作業が遅れた」などと言い放った。

筆者は7月31日、アジアプレス・ネットワークとヤフーニュースで配信した「大阪・堺市の小学校「見落とし」アスベスト除去で説明会 有害性の説明ゼロ 児童不在時の作業要望も市拒否」との記事で市の一連の対応を批判した。

市議会で質疑があったのは9月3日、決算審査特別委員会第2分科会(文教委員会所管事項)。長谷川俊英市議が拙稿などに関連して質問に立った。

まず長谷川市議は筆者が「論外」と指摘した、説明会で石綿の危険性が説明されなかったことを聞いた。

市教委学校施設課の山本敦士課長は、「啓発を前提とせずにおもに工事の内容であったり、スケジュールを説明したというところで、もうちょっとそういったアスベストの有害性、危険性を前段に周知啓発する必要があったことであると認識しています」と答弁。

市は説明会で、児童らが不在の時期に吹き付け石綿の除去工事をしてほしいとの要望を日程的に困難と拒否。その後、保護者らが改めて児童らが不在の夜間作業を要望した。

その対応を聞かれ、市側は「できるだけ保護者に寄り添い、真摯に対応したいと考えておりまして、関係者と協議を進めているところでございます」と前向きに答弁。その後、同連絡会に児童らの帰宅後に作業をすると返答があった。これは評価したい。

また吹き付け石綿の除去作業において、専門的知見を有する第三者の日本石綿対策技術協会(ACA Japan)に工事監視を委託していることも望ましい対応といえよう。問題は委託費が安いため、同協会が工事期間中ずっと常駐する仕組みになっていないことだ。説明会でそれを問われた際、同協会は「(漏えいがあった場合)数分から10分くらいで連絡がいく体制をつくる」と回答。市議会でも山本課長が「漏えい監視につきましては、ICT技術を活用した遠隔監視システムを併用し、デジタル粉じん計による測定や除去作業状況を確認する現場管理体制を構築し、漏えい事故を起こさないよう取り組んでまいりたい」と答弁。不正を許さない仕組みが導入されることを願う。

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