◆本当に作業遅れた?
市議会での質疑後、市教委に改めて確認したところ、さらに重大な事実が明らかになった。
実際にどの作業に遅れが生じたのか説明を求めると、学校施設課の山本課長は「仮囲いであったり、準備段階の作業は一定ある程度説明会が終わった後にやる部分もあり、一定影響した部分もあった」と再び作業に影響したと主張。
しかし、これはおかしなことだ。
そもそも当時作業は日中だけで、説明会は作業が終わった後の午後7時から開催。説明会により作業が遅れるなど、あり得ないはずだ。
どの作業がなぜ遅れたのか、実際に説明会の開催に影響する夜間作業が本当に予定されていたのかなどを質すと、「実際になにが遅れたか、担当者に確認できていない」(山本課長)と明かした。
未確認であるにもかかわらず、養生や仮設などにより「説明会が遅れた」と市議会で主張していたことになり、虚偽答弁の可能性がある。
すでに述べたように市議会で市側は、説明会において養生作業や仮設工事などが説明会と前後し、調整が必要になったとの趣旨の発言をした。筆者がそれを誤解し、実際には除去作業が遅れていないのに、遅れたと勘違いしたとの主張のようだ。
だが、市は思い違いをしている。
そもそも工事が遅れたかのような市側の発言に憤慨していたのは古川さんだけではない。説明会後、「説明会のせいで作業が遅れたとの市の発言には腹が立った」と保護者ら複数の参加者から不満の声を聞いた。筆者はそれで実際には説明会で石綿除去の遅れが生じていないこと、夏休み期間に除去作業をできなかったのは市の発注の遅れが原因だったことを市に確認のうえで、「説明会を開催するために作業が遅れた」との趣旨の発言を「虚偽説明」と批判した。
参加者の反感を買ったのは、筆者も含めて勘違いしたからでは断じてない。説明会における「作業を遅らせてまで説明会を開催してやった」との市側の「上から目線の体質」「嫌みったらしい説明」「恩着せがましい発言」に腹が立ったと参加者は話していた。
つまり、筆者も含めて参加者は市の説明を正しく認識しており、誤解はない。そのうえで、2006年の文部科学省通知で求めているように、本来なら夏休み期間など児童らが不在の時に実施すべき石綿除去工事を「発注の遅れにより」9月に実施するうえ、実際には除去作業に影響がないにもかかわらず、あえて説明会で「作業が遅れた」と発言する市の傲慢さに腹を立てているのだ。
長谷川市議が「相手方が間違った認識をしたんですか、あなた方の説明が間違っているんですか」と問い詰めた際、市側は「説明不足で誤った認識を持たれた」などと答弁したが、この説明こそ「誤った認識」そのものだ。
いくら説明を尽くしたとて、理解などされるわけがない。市側の「本質的に」間違った傲慢で嫌味な説明が原因だからだ。本来「市側の説明が間違っていた」と認め、謝罪すべきだったはずだ。ところが、事実確認すらできていないのに「相手方が間違った認識をした」と主張した。
本来言わなくて良い余計なことをいったのではないかと市教委の山本課長に尋ねたが、認めなかった。
市議会質疑の録画を観た古川さんは、「上手いこと言い逃れをしたというのが正直な感想です。絶対自分たちの非は認めたくない。そんな体質なんでしょうね。いっけん反省しているように聞こえるけど、あれは本当は反省してないと思う。上から目線だから説明会のために工期が遅れて、みたいな余計なことを言う。市民の目線からものごとを見ていない。説明会をしなくちゃいけないということがそもそも計算に入ってない。だからそういう言い方になったんですよ」と呆れていた。
そもそも吹き付け石綿については2005年から建物所有者らに管理義務がある。ところが、市のずさんな調査によって今回の登美丘西小学校など4校については20年近く見落とされ、管理されないまま放置されてきた経緯がある。
本来なら保護者らに石綿ばく露の可能性について説明会を開催して、謝罪のうえで改めて除去作業について説明し、着手とするのが当然のはずだ。健康リスク評価の懇話会を開催していた際、筆者は市に、まず説明会を開催して適切に管理できていなかったことを謝罪してから実施すべきではないかと指摘した。当時、市はリスク評価の結果が出てから考えたいと回答。結局、市はその説明すらサボった。4校のうち1校の日置荘小学校で説明会をしたのは複数の保護者から要望があったからで、当初開催する予定はなかったという。
この間、堺市は何重にも説明をおこたってきた。今回もようやく説明会を開催したと思ったら、経緯を謝罪することもなく、上記のトンデモ発言が飛び出したのである。さらにその問題を市議会で指摘されると、またも論点をずらしてごまかした。こうした堺市の“体質”が再びよく表れた市議会答弁だった。やはり市は猛省すべきといわざるを得ない。
今回の除去工事における万全の監視体制構築と今後の石綿除去工事でそれが維持されることにこそ市の「反省」が活かされる必要がある。さしあたって今回導入するという「ICT技術を活用した遠隔監視システム」が本当に不正を許さない万全の体制になっているかどうかの説明にどのように影響するのか注視したい。






















