戦死した北朝鮮兵士だと、2024年12月にウクライナ当局が発表した遺体写真。韓国当局は2000人が戦死したと推定している。

◆「子供を失くした親が可哀想だ」と言っただけで取り調べ

――政府の宣伝だと冷めた反応は出ていませんか?

戦争でもない平和な時に若者たちが戦死したので、当初人々は不思議に思って「なぜ、どこで死んだのだろうか?」と、コソコソ話していました。表立っては言えませんよ。最近は、あまりにも頻繁に宣伝するためか、「栄養失調で死ぬよりはましではないか」という反応もあります。

8月にあれ(宣伝映像)が出た数日後に、60代のおばあさんが『子供を失くした親が可哀想だ』と言っただけで保安局(警察)に呼び出されて取り調べを受けました。子供たちも一緒に呼び出されて批判されました。その後どうなったかは分かりません。

◆戦死について批判なんてありえない

――戦死者に関する情報統制が厳しそうですね。

うちの町には(戦死者は)いないので詳しくはわかりませんが、戦死について批判や不満を口にするなんてありえないし、周囲からほとんど聞こえてきません。それでも祖国のために死んだんだし、永遠に記憶されることになって良かったという声すらあります。学校では英雄たちに学ぼうという志願事業(キャンペーン)が行われています。

家族同士でどんな話をしているのか分かりませんが、今ここでは、国がしていることについて、一言も言えない世の中になりました。集まりでは、「忠誠」「決死貫徹」「祖国のために」「我が共和国」といった言葉ばかりです。やたらと宣伝ばかりするので、(政府の言うことに)住民たちも少し信心を持つようになったのではないでしょうか。

 

なお北朝鮮国内では、ロシアに派遣兵された兵士が戦った相手は韓国軍だと説明されていると、複数の取材協力者が伝えている。

<北朝鮮内部>ロシアで韓国軍と戦闘と宣伝 早くも「総爆弾決死隊になろう」と青年教育始まる

※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。

 

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