建物などのアスベスト(石綿)除去で一酸化炭素中毒になり、病院に救急搬送された事故をめぐり、労働安全衛生法(安衛法)違反の疑いで書類送検されていたことが明らかになった。相次ぐ重大事故の歯止めになるのか。(井部正之)

◆隔離養生内に発電機設置か
大阪・堺市における戸建て住宅の解体現場(堺区赤坂台)で、5月27日に建物外壁の仕上塗材に含まれるアスベスト(石綿)除去工事中に男性作業員3人が一酸化炭素中毒で倒れ、病院に救急搬送された事故をめぐり、堺労働基準監督署(井手奈津美署長)は施工した石綿除去業者のセイシン(大阪市住吉区千躰)と現場責任者の男性(20代)を安衛法違反の疑いで大阪地方検察庁に書類送検していた。
発表資料によれば、送検は9月2日。
同監督署によれば、現場は鉄骨造2階建ての戸建て住宅(各階4部屋)で、石綿が外部に飛散しないように建物外側の窓や換気扇など開口部をビニールテープでふさいだうえ、外壁から約1メートルの足場外周とその天井部をビニールシートで覆って、建物などとのすき間をビニールテープで固定する「隔離養生」をしていた。出入口は2重になっていて、ビニールシートをファスナーで開閉して出入りする仕組みだった。つまり、出入口を除いてほぼ密閉状態だったことになる。
事故当日は午前9時から隔離養生内で、石綿を含む外壁の塗材を集じん装置を装着した手持ち式の電動グラインダーを使用して作業員3人が除去作業をしていた。同監督署によれば、出入口の2重ファスナーは閉められていたという。
その結果、作業開始から約2時間後の午前11時ごろに隔離養生内に一酸化炭素が充満し、2階で作業中だった作業員3人が病院に救急搬送された。
ほぼ密閉状態だった自然換気が不十分な隔離養生内でグラインダーや集じん装置の電源としてエンジン発電機を設置・使用していた疑いがある。
安衛法では、自然換気が不十分なところで内燃機関を有する機械を使用してはならないと労働安全衛生規則(安衛則)第578条で定めている。
現場責任者の違法性の認識はどうだったのか。そうした知識があったが、何らか事情があったのだろうか。あるいは隔離内に発電機を置いても大丈夫と思っていたのか。
同監督署に尋ねると、「(被疑者の)認識はお答えできない」という。現場責任者の作業経験も同様に「お答えできない」(同監督署)。とはいえ、20代であり、それほど長いわけではなさそうだ。
同監督署は、救急搬送された3人のうち1人が今回送検された現場責任者だったと認めた。隔離内に発電機を設置することの危険性について十分な認識がなかった可能性がある。
今回の事案では、安衛法で事業者の講ずべき措置などを定めた第22条第1項に違反した疑いがある。起訴されて裁判で有罪となれば、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金である(両罰あり)。
同社は9月に建設業許可(解体業)を取得したばかりで、5月の事故時には未取得だった。建設業の許可がなく500万円未満の解体工事を請け負う場合、都道府県に登録することが建設リサイクル法(建リ法)により義務づけられているが、所在地である大阪府の資料では解体工事業の登録も確認できなかった。(個人で登録していた場合など)断定まではできないが、法違反の可能性がある。
建設業許可で登録されている同社の番号に何度か掛けたが、「お掛けになった電話は、お客様の都合で通話ができなくなっています」と料金滞納で通信が遮断されている場合の電気通信事業者による自動音声が流れ、連絡がつかない状況だ。






















