
◆これが国家密輸の仕組みだ
非合法である車両密輸は、仲介ネットワークが重要になる。長白県の密輸事情に精通する前出の貿易関係者は、9月末アジアプレスの取材に対し、中国側の車両密輸ブローカーは主に瀋陽や長春の企業家であり、北朝鮮側が注文した車両のモデルと仕様を受けて、各地から国境沿いまで運んでくると伝えた。
北朝鮮側はといえば、国家機関(対外経済省)の委任を受けた貿易会社が、保衛部(秘密警察)、税関、道貿易管理局などの立会いのもとで、物品を持ち込む。
最近は、貿易会社と結託したトンチュ(金主の意)が国家密輸に介入する状況も確認された。恵山の協力者は次のように伝える。
「個人が直接(密輸を)行うケースはない。トンチュが貿易会社と結託し密輸資金の一部を出している。(密輸で入ってきた車両は)トンチュが直接所有する場合もあるが、大半は企業や貿易会社が利用する」
◆車両の個人所有合法化で、タクシー、レンタカーなど新たな事業勃興の兆し
現在、鴨緑江上流で活況を呈している中古車密輸は、北朝鮮当局の統制と国内の需要、そして腐敗が奇妙に絡み合って実行されているわけだ。
北朝鮮は今年初め、個人の車両所有を全面的に許可した。コロナ・パンデミックを機に、個人の商行為を制限し国家による経済統制基調を強化してきた金正恩政権からすれば、大きな決断だったと言わざるを得ない。
協力者らの報告によると、北朝鮮国内では車両は単なる輸送手段に留まらず、富の象徴であり、タクシーやレンタカー事業など新たなビジネスモデルとして成長する兆しがあり、車両需要をさらに増幅させているという。
次回は、どのような種類の車両がいかなる目的で密輸されているのかを、超望遠カメラで撮影した写真によって具体的に検証する。(続く)
※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。

1 2





















