果物を売る女性。かつての自由商売は消え去り、商業管理所に商品の仕入れ先や販売価格を登録しなければいけない。手前の男性が運んでいるのは生活用水だろうか。2025年9月、両江道恵山市を中国側から撮影(アジアプレス)

金正恩政権は、コロナ・パンデミックを機に商行為など個人の経済活動を厳しく統制してきたが、2月から新たに個人の衣類加工販売業者まで取締りの対象になり、個人が服を仕立てて販売することが禁止されたという。北朝鮮北部の咸鏡北道(ハムギョンブクト)の取材協力者が1月末に伝えて来た。(洪麻里/カン・ジウォン)

<北朝鮮内部>個人の商行為に強力統制始まる 金正恩氏の反市場政策の一環か 容赦ない商品没収、追い立て

◆ひっかかれば罰金やミシンなどの設備を没収

咸鏡北道の協力者は、当局の方針についてこう伝える。

「服を仕立てて販売する個人業者を取り締まると、当局から通知があった。器用な人は図面さえあれば布を買って(質もデザインも良く人気である)『平城(ピョンソン)加工既成服』などと銘打って販売して稼ぎがよかったのに、これからは国の管理下でしろということだ」

金正恩政権は、コロナ・パンデミックを機に商行為など個人の経済活動を厳しく取り締まった。かつての自由商売は消え去り、ジャンマダン(公設市場)で商売する場合でも、全て「商業管理所」(消費物資の流通を管理する人民委員会(地方政府)の部署)に、商品の仕入れ先や販売価格登録しなければいけなくなった。

今回の報告は、これまで目をつぶってきた個人の衣類仕立て業にまで当局の規制が及んだということだ。協力者はこの措置について、「国はどうにかして、個人が金儲けをするのをやめさせようとしている。取締りにひっかかれば、罰金や生産設備(ミシン等)の没収対象になるとのことだ。許されるのは寸法直しくらいだ」と話す。

<北朝鮮内部>経済統制強化の「布告」出す 物資と外貨の流通を強力取締り(3) 露わになった反市場政策…個人の経済活動を徹底管理

◆特に取締りが厳しいのは軍服の仕立て

鴨緑江沿いを巡回する兵士。軍服の質はよくなさそうだ。2023年10月、平安北道新義州市を中国側から撮影(アジアプレス)

協力者は、取締り対象になった原因を、「中国から羅先(ラソン)にたくさん入って来る布地を貿易会社が個人に販売し、それを個人が服に仕立てて売って利益を得ているため、国営衣料工場の運営に支障が出ていると中央に報告されたのが理由だと聞いている」と伝える。羅先は朝中間の拠点通商口の一つである。

北朝鮮では、国から支給される軍服の質が悪い。そのため、金のある幹部などは腕利きの個人の仕立て屋に発注することがよくあるそうだ。この軍服専門の仕立て屋に、特に厳しい目が向けられているという。

「軍服の生地や仕様を勝手に変更することが問題になり、専門に仕立てていた人たちが特に取締りの標的になっている」

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