① 昨年末に三池淵観光地区に竣工した豪華なホテルを娘と共に視察する金正恩氏。山岳鉄道やスキーリゾート建設も構想されているという。2025年12月23日付朝鮮中央通信より引用

金正恩氏は2012年に執権して間もなくから、外国人客誘致のためにいくつもの巨大観光地開発を進めてきたが、投資回収はまったくできていない。肝いりだった白頭山山麓一帯の観光特区は、竣工直後にコロナ・パンデミックに見舞われた。昨年オープンした元山(ウォンサン)ビーチリゾートも、少数のロシア人が訪れた他は、外国人観光客は皆無と見られる。最近、内国人向けにこうした観光地への旅行パッケージが売り出されたことがわかった。咸鏡北道(ハムギョンブクト)の取材協力者が2月上旬に伝えてきた。(洪麻里/カン・ジウォン

◆「リゾート大好き」の金正恩氏 豪華観光施設を次々作ったが… 

金正恩氏は、2013年の馬息嶺(マシンリョン)スキー場建設(江原道)を皮切りに、白頭山麓一帯の三池淵(サムジヨン)観光特区(両江道)や陽徳(ヤンドク)温泉観光地区(平安南道)、元山葛麻(ウォンサンカルマ)のビーチリゾート(江原道)など、観光開発に莫大な投資をしてきた。しかし、2020年に発生したコロナ・パンデミックにより、当てにしていた外国人の客は呼べなくなり、実質的に宣伝用施設化してしまっていた。

特に金正恩氏肝いりで「世界水準の国際観光特区」を目指し、2019年12月に竣工した三池淵リゾートは、コロナ・パンデミックのため、当てにした中国人観光客が一人も訪問できないままで今日に至っている。これまでの投資回収はゼロだった可能性が高い。

それにも関わらず2025年12月には、三池淵観光地区に新たにホテルが5軒も同時に竣工した。協力者は最近の国内動向についてこう伝える。

「(外国からの)観光客が来なくて稼ぎがうまくいかないため、金を出せるなら誰でも利用できるようにしろという党の指示があったそうだ。白頭山や三池淵、陽徳温泉、平壌見学など、観光商品がたくさん取引されている。これまでは、労働者の中でも選抜された優待者(職場で成果が認められた人)や除隊軍人に、労働党が褒章としてあげたりしたのだが、最近は観光地の入場券や旅行パッケージのクーポンが販売されるようになった」

② 多くの庶民は食べ行くのに精一杯の日々が続く。リゾート地で金を払って観光するなど別世界の話だ。写真はトウモロコシ畑で作業中の北朝鮮住民。女性2人は農場員のように見える。2025年9月、両江道恵山市を中国側から撮影(アジアプレス)

◆温泉3泊食事込みで約1400円から売り出す

プロバガンダ臭の強いリゾート地や保養施設を、一般住民にも利用させて、少しでも回転資金を賄おうという魂胆のようだが、実際にはどのように販売されているのだろうか。

協力者によると、当初は「銀行積立を始めた人や、保険加入した人、携帯電話を買った人などに(施設の利用券をサービスとして)あげていた」という。また、最近は「温泉給養所3泊に食事込みで35万ウォン(約1400円)から販売している」と話す。旅行パッケージをクーポンとして商品化し始めたようだ。
※朝鮮1000ウォン=4円(2月中旬時点)

だが今、企業や工場に勤める一般労働者の労賃は3万5千(140円)~5万ウォン(200円)程度に過ぎない。政府が商行為など個人の経済活動を厳しく規制しているため、副収入も多くは期待できない。一般市民には観光旅行など夢のまた夢の話である。

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