◆府による驚きの対応とその「逆効果」
すでに述べたように校舎内の空気から石綿が検出されていたことから、飛散があったことは間違いなく、生徒らがばく露した可能性があることも間違いない。
では換気対応の効果はどうか。
石綿調査・分析の専門家に府の対応を伝えると、「換気って福島第一原発事故の『ベント』みたいなものですよね」という。
2011年3月11日の東日本大震災とそれにともなう津波により、福島第1原発は全電源を喪失。冷却不能になった原子炉格納容器の圧力上昇による爆発・破損を防ぐため、放射性物質を含む気体を緊急的にベントで外部へ放出した。
福島第一原発の場合、排気を外部に放出する専用の経路が存在。それを経由して効率的に外部放出される。
一方、金岡高校の場合、専用の外部放出の仕組みはなく、単に窓を開けただけだ。これが本当に効果的なのか。
前出の専門家は、「(本当に外部に放出する)ベントされたのかもわからないし、そもそも発生源からの石綿飛散が収まったかも本当は明らかになっていません。最大の問題は、原因究明ができていないことです。原因なく石綿が飛散することはありません。囲い込み工事は、じつは非常に難しい工事で、単に天井板を入れただけでは十分でない可能性があります。おそらく吹き付け石綿の破片がどこかに落ちていて、そこから飛散しているのではないか」と指摘する。
調理中にフライパンなどを焦がした経験があればわかるだろうが、換気扇があっても焦げた臭いはなかなか排出されず、隣接する部屋や上階に焦げた臭いが回ってしまうこともある。換気扇で強制排気していてもそうなのだ。
単に窓を開けただけで、本当に石綿が外部に放出されたのか。あるいは単に石綿を含む空気が校舎内に広く拡散しただけの可能性すらある。府教育庁は「原因は不明」というが、そもそも原因究明をどの程度したのかはっきりしない。仮に石綿を含む空気が外に排気されたとしても、吹き付け石綿の破片など汚染源があれば、何度も石綿飛散が繰り返される。
府教育庁の「換気対応」の有効性には疑問があるだけでなく、石綿飛散後の適切な措置とはいい難い。むしろ校舎内を広く汚染しただけで逆効果の可能性すらある。
◆明らかな手抜き対応では?
金岡高校では、2012年に府の不適正発注による石綿飛散事故が起きたが、結局天井裏に青石綿10.5%の相当劣化した吹き付け材が残されたままになっている。いくら天井板を入れる「囲い込み」工事が2019年までに完了しているとはいえ、実際に検出されているのは、吹き付け材に使用されたのと同じ青石綿である。何らか天井裏から室内側に吹き付け石綿の破片が落下するなどして、飛散している可能性があるのではないか。
じつは2013年5月と2016年12月にも今回と同様の事態が起きているが、その際にはいずれも立ち入り制限、原因究明、清掃のうえで、再測定をしている。報道発表もされた。
ところが2022年12月と2025年11月の石綿飛散では、これらの措置(少なくとも立ち入り制限、清掃、報道発表)が講じられていない。明らかな手抜き対応であろう。少なくとも適切な対応をせず放置したことは間違いない。さらに換気で周辺に拡散した可能性があることから、再測定が1カ所だけなのも安全確認として不十分である。
府の反論もむしろ逆効果で石綿飛散を拡大させた可能性すらあり、適切な「対策講じず放置」した実態は変わらず、考慮に値しない。
大阪府教育庁は過去の事例に学ばず、原因究明を適切に講じないばかりか、立ち入り禁止措置や清掃もないまま、生徒を石綿ばく露の危険にさらしている。14年前の飛散事故の教訓とはなんだったのか。























