韓国政府はロシアで北朝鮮兵2000人が戦死したと推測している。写真はロシアのクルスク地域でウクライナ軍がドローンを使って撮影したとして、2024年12月17日に公開した北朝鮮兵

北朝鮮で春の新兵募集=「召募(チョモ)」が始まった。今年は、若者たちの中に「真の英雄になる」と特殊部隊への入隊を希望する者が目立つという。当局は、ロシア派兵から戻ってきた兵士を母校に派遣して講演させるなど、「英雄化」宣伝を盛んに行っている。それがまだ18歳ほどの若者に多大な影響を及ぼしているようだ。北部地域に住む取材協力者が3月末に伝えてきた。(洪麻里/カン・ジウォン

<北朝鮮内部>ロ派遣兵士を巡回させ「軍人精神」と「英雄」を宣伝(1) 「戦場でロシアがうらやむほど勇敢に戦った」と軍部隊で講演 迫真映画も制作

◆「親を平壌に住まわせてあげる」…洗脳教育を憂慮する親たち

北朝鮮では、高級中学校(高校に相当)を卒業すると軍入隊の対象者となる。特に男子は、身体に問題があったり進学したりする場合を除いて、ほぼ全員が入隊する。協力者によると、今年は計4回召募が計画されているという。

例年、軍入隊を忌避したり、遅らせようとしたりする事例が後を絶たず社会問題となっていた。しかし、今年は様変わりしているという。協力者A氏は次のように伝える。
「特殊部隊に行くことを希望する生徒が多いそうだ。『真の英雄になる』とか『英雄になれば家族が配慮される』と大きなことを言っている。〇〇中学では、幹部の子どもたちが率先して最前線や特殊作戦軍への入隊嘆願書を提出する行事まで行った。死ぬことが何なのかわかっていないと、親たちはとても心配している」

官営メディアは、金正恩氏がロシアで戦死した軍人を悼む様子や、平壌に建設した戦死者家族のためのアパートに遺族らを呼び寄せる様子を華々しく報じた。加えて当局は、アジアプレスが3月末に報じたように、ロシア派兵された兵士を各地の学校に送って「英雄化」教育を進めている。北部地域の協力者B氏は、「兵士が涙を流して党と(金正恩)元帥様の配慮に対して感謝を話し、生徒たちも泣きながら聞いていた」と伝えていた。

こうした洗脳作業の結果、高校を卒業したばかりの若い生徒の中に「戦死して英雄になれば、家族が平壌でいい暮らしができる」と信じ、それを望む者が出てきているというのだ。

北朝鮮の官営メディアは、平壌の一等地にロシア派兵の遺族のために建設したアパートが2月に完成し、遺族が入居したと発表した。2026年2月16日付朝鮮中央通信より引用

◆入隊する息子の無事祈り「333中国元」持たせる

当然、親としては心配だ。A氏はその様子をこう話す。
「どこで聞いたのか、(ロシア派兵で)多くの兵士が死んだという噂が流れ、ますます心配している。とある召募生の親は、英雄ごっこに夢中になっているひとり息子が『お母さんを平壌に住まわせてあげる』と言うのを聞いて、『息子がいなくなれば、平壌ではなく天国に行って暮らす』と嘆いていた。祖国に忠誠を尽くし、英雄になりなさいと言う親もいるが、そんなのは表向きだけのことだ」

そんな親たちの間で、ある行動が生まれているという。
「入隊する子供に中国の金で333元を渡している。(北朝鮮では)3は福(健康、安全、幸運を意味する縁起の良い数字)と言われることから、心配するあまり迷信でも信じようとしているのだ。まあ、そんなことをできるのも、余裕のある家庭だけだが」

平壌の新居に入居した戦死者の遺族とされる人を金正恩氏が訪問したと官営メディアが伝えた。後ろに立つのは正恩氏の娘。2026年2月16日付朝鮮中央通信より引用

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