[柳本通彦] 台湾海峡天氣晴朗なれど No74~「Xデー」その7

081217__yanagi.jpg【今日12月13日付新聞一面。ただいま売上ナンバーワンという香港資本の「蘋果日報」がコンビニに山積みになっていた】

昨日、金曜日午後、陳水扁総統一族の捜査が「終結」し、14名の被告が起訴された。逮捕されたXデーが11月11日、二つ目のXデーは12月12日、これら数字の語呂合わせといい、今回の「起訴」はいろいろな謎に包まれている。

最大の謎は、求刑がなかったこと。刑事事件の起訴状に求刑がないという話は初耳だが、当然ながらいろいろな憶測を呼んでいる。
特捜は、陳水扁に最厳罰、妻と長男夫婦に重量刑を科すよう求めた格好にして求刑を避けた。何らかの理由でゲタを裁判官に預けてしまったのである。

罪状は簡単に言うと、収賄、国費流用、マネーロンダリングの三つ。これらを合算すると最高刑は無期だという。要するに陳総統は無期にしろというのである。しかし「無期」にしろ「三十年」にしろ、起訴状には書けない。書きにくい事情が生まれたとみられる。

考慮されたことの一つは、やめて一年も経たない前総統に「無期刑」を科すことの反動。裁判は長期化する。その間総統をいわば「未来の無期囚」として拘留しつづけることを憚ったともとれる。そして取り沙汰されるのはその間に馬英九政権がなんらかの政治決着をはかる可能性である。

特赦して海外追放という手もあろう。しかし有権者がそれを許すだろうか。とにかく世情を見極めるために結論を先延ばしにしたのではないか。
求刑せず、が検察の大きな妥協であったことを示すように、陳水扁は起訴と同時に釈放された。無期の重罪犯を保釈金もなく自由にした。検察がこの裁判所の決定に抗告をしなかったというのも大きな謎である。

とにかく陳水扁はほぼ一か月ぶりに妻のいる自宅に戻った。
その妻にも同様の罪状が指摘されている。先号で紹介した台湾五大財閥の御曹司辜仲諒の証言によると、総統府で陳総統から賄賂を官邸のほうにもって行くように指示された。官邸に行くと夫人の呉淑珍が待ち構えていて金額を指定される。合計2.9億元(約9億円)の現金!を官邸のみならず総統府にも直接運び込んだという。
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