公設市場の穀物売り場。昨年は穀物価格が春先から乱高下して人民生活は混乱した。(2008年9月平安南道安州(アンジュ)市 シン・ドソク撮影)

公設市場の穀物売り場。昨年は穀物価格が春先から乱高下して人民生活は混乱した。(2008年9月平安南道安州(アンジュ)市 シン・ドソク撮影)

 

拡散する金正日重病説 北の民衆はこう受け取った 3 石丸次郎
「生活が大変で、それどころでない」という声も
一方で、無関心な態度を示す住民も少なくない。

朝中国境地帯に住むリムジンガンの中国朝鮮族スタッフたちに、九月以降北朝鮮からの越境者に会ってインタビューを続けてもらっているが、金正日の「異変発生」についてほとんど関心を示さない人が少なくないと言う。
特に、生活の苦しい下層の人々にその傾向が強いと報告してきた。

「将軍様が病気になろうがどうしようがどうでもいいです。今年(○八年)は米の値段がむちゃくちゃに上がって、生きていくのも大変だ。今日をどうやって食いつないでいくのかが何より大事だから」
(咸鏡北道穏城(オンソン)郡から一時的に中国に越境してきた四○代の女性)

「監視が怖いから本音を言わないにしても、私を含めて周囲では将軍様の話なんかほとんどしません。皆が関心があるのは一にも二にも商売のこと。将軍様が食べさせてくれてるわけではないんだから」
(もし金正日が死んだらどうなると思うかという問いに対して)

「息子が何人もいるという話だから、どうせどれかが後継者になるんではないの? 戦争でも起こらない限り朝鮮は変わらないと思う」
(平安南道から商売のために一時的に越境してきた四○代の男性)

北朝鮮政権にとって怖いのは、実はこのような無関心なのかもしれない。
日夜、官製メディアを使い学習会を組織して、金正日将軍の偉大さを宣伝注入し忠誠心を涵養してきたはずなのに、皆、自分の暮らしのことで精一杯で、将軍様の存在感は頭の中で希薄になって行く一方だ。

存在意義が感じられない指導者、生活を向上させてくれるわけでもない指導者ならいなくてもいい、このような方向に意識が向かうことは、体制の正当性の否定につながる。これは北朝鮮の為政者にとって脅威に違いない。
(つづく)

公設市場の周囲には、露天の食べ物屋が広がっている。軍人たちが食事する横で、食べ物を乞うているのだろうか、コチェビ(浮浪児)らしき少年が立っている。(2008年9月平安南道安州市 シン・ドソク撮影)

公設市場の周囲には、露天の食べ物屋が広がっている。軍人たちが食事する横で、食べ物を乞うているのだろうか、コチェビ(浮浪児)らしき少年が立っている。(2008年9月平安南道安州市 シン・ドソク撮影)

 

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