焚き物にするため刈り取り後の田で藁を集める。(2008年10月黄海南道のとある農村 シム・ウィチョン撮影)

焚き物にするため刈り取り後の田で藁を集める。(2008年10月黄海南道のとある農村 シム・ウィチョン撮影)

<奪われるために働く農民たちの悲惨>記事一覧

北朝鮮の人々がもっとも憐れみ、もっとも辛い職業だと口を揃えるのは協同農場員である。生産物をずっと国家に収奪されながら不満を言うこともでき ず、職業を変えることも、都市に移り住むこともできない。しかし、これまで農民の暮らしの実態は、なかなか外部世界に伝わってこなかった。とりわけ穀倉地 帯の黄海道は、中国から距離が遠く、確かな情報が伝わってくることはきわめて少なかった。

朝鮮労働党幹部から、その詳細を語ってもらうことに成功した。平壌の党のある部署で農業を担当する金昌根氏(仮名)である。金正日氏の生前から、小さな糸口をきっかけに本誌・中国人メンバーと長く秘密接触を続けてきた人物だ。

キム氏は平壌と地方都市を行き来しながら、労働党中央の政策の伝達と農村幹部の監督を主任務とし、協同農場の実情を上部に報告する業務を長く担って きた。キム氏は公務で度々中国を訪問するのだが、単独で行動できる余地がほとんどない。北朝鮮の公務員や党幹部は、中国でも原則として二人以上で行動する ことになっているからだ。
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