釈放のはずが、またつかまって
(文) チャン・キルス

列車脱出 北朝鮮に残してきた家族を救い出すため、中国から豆満江を越えようとして北朝鮮の国境警備隊に見つかりました。その後汽車に乗せられて逃亡者収容所に移動中、手薄な警備のすきをつき護送列車から脱出しました。 ―デハン(キルスの叔父)

列車脱出
北朝鮮に残してきた家族を救い出すため、中国から豆満江を越えようとして北朝鮮の国境警備隊に見つかりました。その後汽車に乗せられて逃亡者収容所に移動中、手薄な警備のすきをつき護送列車から脱出しました。 ―デハン(キルスの叔父)

 

ぼくはすぐに答えることができず、言葉に詰まってしまった。しかしなぜなのか、彼らはぼくたち二人を釈放してくれた。
ぼくたちは助かったと思い、駅の方に行った。ところが、駅前にいた軍人が近寄ってきた。
「こいつらを道安全局巡察隊に引き渡せ」
彼は横にいた兵士に命じた。

「ぼくたちは今、小隊政治指導員の検閲を受けてきて、家に帰るところです」
「おれが中隊保衛指導員(注・軍には、軍人の政治・思想動向を取り締まる保衛部員が配置されている)なのに、だれが帰すというんだ、このガキ!」
ぼくたちは再び最初につかまった道安全局委員会に連れて行かれた。扉も窓ガラスもない一番奥の部屋に入れられた。夜になっても灯りはなかった。

少しすると安全員二人が入ってきた。20歳ぐらいであった。彼らは政治大学を卒業したばかりで、道安全部に配置された後、「金正日の方針」(命令)を受けて、地方に来た若者であった。

彼らは懐中電灯を持って部屋に入り、ぼくたちに手錠をかけた。そしてぼくたちを部屋の片すみに押しやり、足でけり、拳で殴りはじめた。床にひっくり返ると靴で踏みつけられ、犬を屠殺するように、ひどく蹴りつけられた。ぼくは「なぜ殴るのか」と何度も抗議をしたが、そうするほど、殺そうとするかのように罵りながらひどく殴りつけた。
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